「好きなことを仕事にしようとしたけど、やっぱりそれはできなかったからやめた」
「好きなことは仕事にできない」
「趣味と仕事は違った」
「稼がなきゃいけないから好きじゃなくなった」
こういった言葉を簡単に口して、諦めてしまう人は正直「変態力」が足りないと思います。
変態力というのは好きなものに対して向き合えば向き合うほど高くなります。言い換えるとしたら「いきすぎ」「やりすぎ」「気持ち悪いぐらいやりこんでる」「濃度が高すぎて引く」みたいな感じです。けなしているように見えるかもしれませんが、全く逆です。変態力が高い方が最高です。
むしろ、この変態力があれば好きなことを仕事にしやすくなります。
じゃあこの変態力を高めるためにはどうしたらいいのか?
変態力の高め方「分解とスクリーニング」
変態力は「好き」の純度を高めていけばいくほど高まります。
簡単に言うとですね、分解してふるいにかけていくんですね。
より細かい目のふるいでサーラサラやっていくわけです。
例えばですけど、僕はドーミーインというホテルがとても好きなのですが
このとき、ドーミーインの…
どの部分が好きなのか?
どんなときに好きと感じるのか?
どうしてドーミーインを選ぶのか?
を考えていきます。5W1Hです。
Who?
→ドーミーインのスタッフさんが好き?だとしたら誰が?誰と?
When?
→どんなときにドーミーインを好きだと感じる?
Where?
→どこの店舗のときに好きだと強く感じた?
What?
→ドーミーインの何が好き?
Which?
→ドーミーインと東横インだったらどっちが好き?
Why?
それはどうして?
How?
ドーミーインのどのような感じが好き?
5W1H全部書き出せなくても良いので、まず「ドーミーイン」を分解していきます。
ひとことで「ドーミーイン」と言ってもいろんな要素があります。店舗によっても仕様が違いますし、スタッフも違いますし、行く時の気分でも違います。一緒に行く人(誰?)でも変わるかもしれません。
適当にドーミーインの要素を分解して書き出してみます。
そして、この中で自分が「そうそう」と思うポイントには「○」をつけます。「ここはそうでもないな」というポイントには△をつけます。最後に「そこじゃない」と思う要素には「×」を書き入れます。
書き出してみると意外とドーミーインじゃないホテルの情報が混在していたりすることに気付いたりもします。このとき確認するのも大事です。記憶は適当ですから改めて確認してみます。
そして、上のように自分がドーミーインの何が好きかを考えたときに「駅近で温泉があるホテル」であることが高評価の理由だということがわかります。(ドーミーインのスタッフやベッドや枕が悪いわけではなく自分の中の優先順位が低いというだけです)
じゃあ他にも「駅近で温泉があるホテル」はないか探して、実際試してみます。スーパーホテルの一部店舗にも温泉がありますから、実際宿泊して比較してみます。
スーパーホテルはドーミーインと違って「夜鳴きそば」がありません。となると、自分の中でドーミーインの好きな要素として「駅近」「温泉」「夜にタダでラーメンが出る(夜鳴きそば)」が浮かび上がってきます。
分解・評価・比較・抽出
例えば、あなたが好きなアイドルがいたとして
そのアイドルの何が好きなのか?見た目なのか?歌がうまいところなのか?ダンスがうまいところなのか?笑ったときの笑顔が好きなのか?地元が同じだから応援しているのか?と、いろいろ要素を挙げて他のアイドルと比較していきます。
あなたの「好き」をだんだんとふるいにかけて、より濃いものにしていくのです。
自分が「好き」だと感じる要素を抽出して純度を高めていくのです。時には比較のために他のアイドルのライブに行ったりすることも必要かもしれません。
これが「変態力」を高めていく作業です。よりピンポイントでマニアックでフェチズムな要素を明確にしていくのです。
全部好きじゃないと好きと言えない教
ここで最初のテーマに話をもどします。
「好きなことを仕事にできない」と考え、言葉にして、諦めてしまう人は「全部好きじゃないと好きと言えない教」に入信している場合が多いです。
例えば「服が好きだからアパレルで働いてみたけど、あれだけ服が好きだったのに続かなかった、服に関する仕事は私には合わないのかもしれない」と考えて「服」に関する仕事を諦めてしまった人は
「服」を掘り下げていく必要があります。このときも5W1Hです。なぜ?どこが?どうして?誰が?どのように?
掘り下げて見ると、もしかしたら「友達のイクミちゃんとフリーマーケットで服を出品したときに楽しかった」という要素が出てきて、もしかすると好きなのは「服」ではなく「イクミちゃん」だったり「フリーマーケット」だったりするかもしれません。
もしかすると「あのお店の店員さん」に憧れて、そのブランドに足繁く通っていっただけだったりするかもしれません。
そして「アパレルで働くこと」からも同じように要素を抽出していきます。
「アパレルで働く」ということの中には「不純物」が入ってきます。これは実際やってみて初めて見えてくる要素です。
「クレームを言われる」
「売上目標へのプレッシャー」
「評価してくれない上司」
「残業が多い」
「表計算で売上と在庫管理」
「マネージャーへの言い訳」
…いろんな不純物が入ってきます。
そしてよくよく見てみるとあなたの「服の好きな要素」がちょっとしか入っていません。
そうなのです。「服に関することならなんでもいいや」と漠然と考えてアパレルで働くと、実際自分が好きな要素の割合が少ないことに気付きます。あれ?買い物する側だったときはこんなはずじゃなかったけどな。
でも、これは大事なことなのです。実際にやってみることで比較対象が生まれるので、本来であれば「より自分の好きな要素」が浮き彫りになってくるからです。アパレルで働いてみた経験は全然悪くなかったのです。
それなのに、きちんと「服」のどの部分が好きなのかを分解してスクリーニングしないから「アパレルに適さない私=服に関係する仕事は全部だめ」というような短絡的な思考に陥ってしまいます。
「アパレルが天職」と感じられる人は、その仕事の中に「好きな要素」が多いだけなのです。それはたまたまかもしれませんし、コアとなる軸が満たされていればそれで好きと言える人もいます。
そのような人と比較して「自分はアパレルの仕事の中に好きな要素が少なくて、全部好きだと言えないから、服が好きとは言えないんだ」と勘違いしてしまう人がいます。そういういった人が「結局、好きなことでは食っていけない」と考えてしまうのです。
これは仕事以外に「人」でも同じようなことがあります。「彼氏の全部好き」と言えればそれはハッピーです。しかし、そうはいきません。
このときに「彼氏のこういうところは好きだけど、ここは嫌い」と明確に部分でわけて考えていきます。嫌いな要素・許せない要素が大半を占めるなら別れてもいいと思います。コアとなる要素が許せないなら無理に付き合う必要はないです。
でも中には「特定の部分が嫌い」なだけで「全部嫌い」という考えに至ってしまう人もいます。また「特定の部分が嫌いだ」と指摘されただけで「私の全部嫌いなんだ」と勘違いする人もいます。100点じゃないと意味がない。こういった考え方は非常にもったいないのです。
きちんと要素を分解できて明確にできていれば、全部ではなく一部だと認識できれば、関係性を修復できる可能性があります。諦めてしまった「好きなことを仕事にする」ことにも近くことができます。
思い出補正と雰囲気補正
こうやって初めから分解して濃縮していければ比較的すぐに好きなことを仕事にすることができるのですが、厄介なのが「思い出補正」と「雰囲気補正」です。
これらがあると「分解して選別した結果、嫌いです」という要素も「好き」になってしまうのです。本当に厄介です。
例えば、留学先でいろいろな体験をしたとします。
「マーケットで買い物をする」
「英語で意見を述べる」
「優しいホストファミリー」
「多すぎる朝食」
「バスケットボールをぶつけられて歯が折れる」
「トムとのファーストキス」
ここで「日本にはない雰囲気」という補正が入るとそれだけで「オールオッケー」になったり、トムとの初夜の思い出が楽しすぎると「思い出補正」が入って「全部よかった」ということになってしまうのです。
で、現実生活が楽しくないとこれらの補正はより強くなって「多すぎる朝食」が「良いこと」で「日本の朝食は少なすぎる!」とか「日本人の男はキスが下手!」といった考えになってしまうわけです。
あなたも雰囲気とか思い出で補正がかかっている出来事や人はありませんか?
いや、いいんですよ。そういうのがあっても。
でも、補正が強すぎると「全部好きじゃないと好きと言えない教」に入信しやすくなるんですよね。
本当は嫌いな要素もあったのにそこは見ずに「もっとあのときみたいに完璧に自分にピッタリで最高な環境じゃないと意味がない!」と、現状にずっと不満を持ち続けて、ずっと「やりたいことが見つからない」と言い続ける。
で、この補正を解消するには「現実を見る」しかないんですよ。ファーストキスを奪ったトムにまた会って見るわけです。もう一回留学先の土地を訪れて見るわけです。
改めてやってみると「案外たいしたことなかった」とか「あれは思い出補正だったのか」とわかることってけっこうあるんですよね。目を覚ますといいますか。
確かに大事にとっておきたい思い出や空間はあると思います。でも、閉ざされた伝説の宝箱にするのではなく、箱を開いて中身を整理することもときには大事だと思うんですよね。
分解して濃縮してオンリーワンの仕事へ
例えば「占いが好き」だったとしたときに、「占い」にもいろいろな要素があります。
占うこと、対面、文章、電話、本を読む、習いに行く、本屋の雰囲気、当てること…どの要素が好きかが明確になれば、別に「占い師」じゃなくてもいいわけです。
「占いの本を読むことが好き」なのであれば、本を紹介するお仕事でもいいかもしれません。
「占われること」が好きなのであれば、「占われアドバイザー」でもいいかもしれません。占いの練習をしたい人は一定数いますし、コメントが欲しい人もいます。
同じような「占われたい人」を集めて「占われ組合」を作って、占い師の練習の場をコーディネートするのもありです。
分解して濃縮して、変態力を上げることで何が好きかが明確になります。あとはそれに沿った仕事を作っていけばいいだけなのです。無理して既存のものに合わせようとするから、不純物が入って苦しくなるのです。
適した仕事がないなら創ってしまえばいいのです。
まとめ
1.好きなことを分解して要素を濃縮する(変態力の向上)
2.現状の自分を分解して要素をピックアップして1と比較
3.全部好きじゃなくても良くて、部分で考えていく。
4.思い出補正と雰囲気補正を打ち砕くことで前に進めることも。
5.既存の型に囚われず1の要素をたくさん含んだ仕事を創り出す。
柔軟に、冷静に、そして諦めずにいきましょう。もし判断がつかないときは判断材料を集めるために動いてみましょう。
言葉にならない、言葉にしていないものはいっぱいあります。
でもそれを言葉にしようと試みることが大事なんじゃないかと思います。
うーん、何とも言えない話ですなあ。
にしけい