火沢睽は二律背反性を描いた調和と相互理解を重んじる卦です。

周易に火沢睽という卦があります。この卦を見て「背く」「仲が悪い」「噛み合わない」といった仲違いやネガティブな意味で理解が止まっている人がいたら、それはちょっともったいないかもしれない。兌が未熟な若い嫁で、離が中年女性で、その女性二人が背き合っているという説もありますが、では同じ八卦の組み合わせである沢火革はどうなるのでしょうか?

「睽」には確かに「そむく」という意味がありますが、見ている方向が違うだけで、なぜ「仲が悪い」と決めつけるのでしょうか?「そむく」という訳に引っ張られてネガティブな解釈が多すぎますが、象伝には「男女は睽(そむ)けども、志通ずるなり」と書かれています。

そもそもまず「睽」の「癸」は🔄です。

「癸」とは何か?
https://nishikei.jp/nishikei-pon-uranai/40809/

「癸」の🔄→というのは、ひとつに混ざり合っていた存在がそれぞれ全く別の道に向かい始めることを指します。同じ中学で勉強した生徒たちがそれぞれ自分が向かうべき進路に進み始めるようなイメージです。

次に「目」という漢字です。目は肉体的な眼球を表すこともあれば、「目的」「目標」などの「向かう先」を示すこともあります。「視線」が表されることもあって、「目上の先輩」といった具合に、向かっている方向を表しています。

「睽」という漢字を僕なりに意訳すると、「もともと1つだった(1つの場所にいた存在)が、分かれて違うほうへ向き始める」という意味になります。何度も言いますが、卦辞にも象伝にも爻辞にも「仲が悪い」という表現はひとつも書かれていないんです。ただ、「そむく」という漢字から冒頭に説明した女同士の戦いみたいな謎解釈が付与されて、ネガティブな意味として独り歩きしているだけなんです。こういう雑な解釈を付与して広めた人が誰なのか、だいたい見当がついているんですけどね。その人が権威扱いされているので、マジで謎です。

 

分離と分岐の違い

 

分離は2つのものが完全にそれぞれが独立して存在することです。分岐は起点(出発点)が同じときに用いられます。分離と分岐は大きく違います。火沢睽は分離ではなく「分岐」なのです。もともと出発点が1つで統合(癸)されていたわけですから、つながっているんですね。連続性があるのです。

このあたりをきちんと丁寧に理解していかないと、周易のガイドブック的な本やサイトの知識だけでは「仲が悪いからうまくいかない!」で終わってしまうわけです。本当にもったいないです。

 

二律背反の必要性

 

「根っこは同じけど、結果が違う」

これが火沢睽なんです。

あなたが「生きること」という目的を達成するためには、「殺すこと(他者の命を奪うこと)」と「生かすこと(育てること)」という二律背反となる行為をしている、もしくは容認しているはずなんです。

例えば、あなたが食べている野菜やお肉は「殺すために生かされた命」なんですね。矛盾するかもしれませんけれど、ひとつの目的(根っこ)を達成する…という点においては矛盾しないんですね。

火沢睽を理解するためには、表裏一体、弁証法的分岐を理解する必要があり、そのためにはより高い視座からテーゼとアンチテーゼを観察するジンテーゼ的な発想が必要なんですね。

よく会社の中で営業部門と製造仕入れ部門がケンカしている場面が見受けられます。「製造が良いものを作れないから売れないんだ」と「営業の営業が下手だからめんどくさい仕事が増えるんだ」みたいな対立です。彼らは表面上は対立しているわけですが、本来は「会社の利益を獲得する」という共通の課題や目標があって、その役割や立場が異なるだけなのです。

「商品を中に入れる人」と「商品を外に出す人」という相反する役割をもっているのですが、本来は目的が一緒なんです。それらを統合するには第三者の経営者的な視座が必要になります。

何度も言いますが、火沢睽は分離ではなく「分岐」です。つながっていて、互いの根っこは同じなんです。男性と女性の役割が違うのと同じです。それぞれ役割が違うだけで、共通の根が存在しているんですね。

というのも易経の原本に書いてあって、漢字1文字1文字を丁寧に翻訳したら、「仲が悪い」「噛み合わない」といった解釈にはならないと思うんですけどね。どうやって解釈したらそうなるのか逆に教えて欲しいです。

とはいえ、そういった媒体から初めて易の存在を知り、学んだ方もいるわけですから、それはそれで同じ易を学ぶ者としては、違う役割で両方必要なのだと思います。役割や立場が違うことを相互に理解し合うことが、火沢睽の真髄なのですから。

というわけで、その「火沢睽」の卦を刺繍したキャップが「卦キャップ」になります。

卦キャップ
https://nishikei.jp/shop/00001/

みんな、火沢睽の意味を知って卦キャップをかぶろう!二律背反!弁証法的分岐!

にしけい

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書いている

西田 圭一郎 (にしけい)

1987年富山市生まれ。化学系工学修士。商社の開発営業職を辞めて、占いとWeb開発などを生業にしています。趣味は読書と旅とポケモン。文章を書くことが好きです。三児の父。詳しくはこちらから。

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