「○○(地名)はブスしかいない」とはどういうことなのか?

ときおり、「○○(特定の地域)にはブスしかいない」といった言説を耳にします。

自虐的に言われる場合もあれば、特定の地域について悪く言われる場合もありますが、いずれにせよこのような無神経な言説に対して、自分なりに背景を考察してみます。

まず、この「ブス」という言葉を使うにあたって、女性蔑視や差別の意図は全くないことを前述しておきます。読み進めて頂ければわかると思いますが、形質の要素を作り出すのは女性だけではなく男性も大きく関わってきます。

自虐的に言ってる人は自分も当事者でありその傾向に関与している可能性がある自覚をもったほうが良いでしょうし、他の地域を悪く言うために言っている人は、自分の価値基準が凝り固まっていることを改めたほうが良いでしょう。

「そんなこと言うヤツのほうがクソだ!」という前提で考察していますが、せっかくならこの言説の背景を掘り下げたがほう役に立つものが出てくるかも?という試みです。

 

選り好み行為

 

生物は「選り好み」という行動を取ります。オスがメスを選ぶとき、メスがオスを選ぶとき。他に選択肢がある場合「選り好み」が起きます。

「選り好み」は一言で言うと、選別と分類です。

例えば、学校や会社に入るための「試験」や「面接」があります。あれも一種の「選り好み」です。

例えば、「学歴」という基準を重視して入社試験を行った場合、合格して入社する社員には「似たような学歴」になる可能性が高いです。特定の大学を卒業した人物や、一定の学力をもった人が選別されるので、その会社という場には近似した学力の人たちが集まります。

 

 

まず、一度「見た目」から離れて考えてみますが、「特定の場には特定の性質をもった人が集まりやすくなる」という現象は様々なところで観測されます。生物が交尾相手を決める際の「選り好み」と同じような選別が様々な場で行われています。

 

場に適応できるか

 

この選別は大抵の場合「その場で生き残りやすい可能性が高い」という軸が存在します。

野球の名門校と呼ばれる学校では、「野球が上手い人が高く評価される場」において生き残っていけるかどうかが選別の軸となります。その場で競争が発生した場合、より野球が下手な人はその場には適応できず、淘汰されていきます。

 

 

何かしらのコスト(一生懸命指導して、練習させるなど)をかければ適応する可能性もありますが、かけるコストに見合った適応度が得られない場合は淘汰される可能性が高いです。

となってくると、「特定の地域にはブスしかないない」という現象は、その地域(場)では「(一般的には)ブスと認識される人のほうが生き残りやすく、子孫を作りやすい」という可能性があります。

「見た目の良さ」で選ぶよりも、他の要素で異性を選択したほうが、その地域では生存確率が高くなり、その蓄積から「○○にはブスしかないない」という現象につながっている…という可能性です(ランナウェイ過程)。

しかし、選り好み行為にもコストがかかります。入社試験やテストが増えれば増えるほどコストが増えるように、生物が子孫を残す上でも厳選しようとするとコストがかかります。

安定な環境であれば、選り好みしている余裕もあるのですが、不安定な環境では選り好みできない可能性もありますし、手間をかけずに交尾相手を選ぶ必要が出てきます。

 

つまり、「○○にはブスしかないない」という現象を掘り下げると、下記の4つが考えられます。

 

  1. 一般的にはブスと認識される形質のほうが生存競争において優位だった
  2. 選り好みにおいて、見た目以外に重視される要素があった
  3. 見た目を選り好みするためのコストをかけたくなかった
  4. 選り好みできるほど安定な環境ではなかった

 

1は単純に「他の地域との(美醜の)価値観の違い」です。2と3はまとめてもいいかもしれません。

 

時代や流行とのズレ

 

「ブス」や「ブサイク」という認識を、多数派(平均値)からかけ離れた形質と定義するのであれば、「○○にはブスしかないない」という現象が起きている地域では、平均値からかけ離れた形質を選別する人が多いということになります。

前述した、2と3の説がそれに該当します。

しかし、多数派(平均値)は時代や流行と共に変化します。選別の軸自体が流動的で、状況によって変わってきます。

「これまでは大卒しか採用しなかったが、育成コストをかけられるようになったので高卒も採用していこう」ということもありますし、個人でも「今までは濃い顔が好きだったけれど、薄い顔の人が好きになった」ということもあります。

そのため、「○○にはブスしかないない」という現象は一過性であることを加味しておく必要があります。

 

美しさ=生命力?

 

さて、別の観点からも考えていきます。

なぜ「多数派」が存在するのか…という点です。

要するに、高身長、ガッチリ体型、顔が整っている…といった性質を「イケメン」と称し、高評価する人たちがなぜ多いのか?という疑問です。

 

メスが交尾相手を選ぶ際に、下記のような場合「生存競争で優位に立てる」という点で「良い遺伝子」として判断しているという説があります。

 

良い遺伝子の指標:

男らしさ、身体的魅力、筋肉質、左右対称性(シンメトリー)、知性、立ち向かう力

The evolution of human mating: Trade-offs and strategic pluralism.

 

男らしさ、身体的魅力、筋肉質、立ち向かう力というのは、男性ホルモン「テストステロン」と関係があるようで、テストステロンが多いほど、これらの要素が高くなります。

本来テストステロンが分泌されると免疫系が低下するため、極めて健康な男性だけがテストステロンを大量に分泌する「余裕」があり、テストステロンが大量に分泌できるオスは健康であり、生存競争を勝ち抜きやすい遺伝子であると本能的に判断される傾向があるそうです。

↓この論文の本文や引用元などを読み漁るといいかも。

Attractive Women Want it All: Good Genes, Economic Investment, Parenting Proclivities, and Emotional Commitment

 

これはスズメが「朝チュンチュン鳴くオスをパートナーとして選ぶ」のと似ています。

 

 

スズメは鳥目なので夜は獲物が見えず、捕食することができないため、早朝は本来空腹で倒れそうなのですが、そのような状況でもチュンチュン鳴けるオスは「健康」で「元気」だと判断され、交尾につながるそうです。

スズメが「朝からチュンチュン鳴くオス=健康な遺伝子」と判断するように、人間は男らしさ、身体的魅力、筋肉質といった要素から「健康な遺伝子」と判断するようです。

そのため、本能的には上述したような形質をもつオスのほうが選り好みされやすく、「多数派」が存在するのです。

 

シンメトリー仮説

 

顔の話に戻しますが、上述した「健康なオスの定義」の中に「シンメトリー(左右対称性)」というものがあります。

性淘汰の過程でシンメトリー(対称性)が高いほうが、健康で生き残りやすいという説です。

 

 

この説は、左右対称→機動力に富む→捕食力が高い・回避しやすい→生存競争で生き残りやすい という点から「対称性=遺伝子的に優秀」と判断をしている…というものです。

対称性が高い親から生まれる子も対称性が高くなりますから、対称性が高い相手が選ばれ続ければ「顔のバランスが整った子孫」が残りやすくなります。

このあたりは過去に人相の講座でも、「吉相=生命力の強さ?」という軸で目や鼻や口といったパーツごとに生物学的な人相の解釈を解説しております。

 

【全3回】生物学から解読する人相学講座

 

シンメトリー仮説は反証論文も結構出ています。それはそうです。人間社会において「顔の対称性の高さ」と「生き残りやすさ」は必ずしも比例しません。

しかし、生存競争に優位になりそうな遺伝子の条件(男らしさ、身体的魅力、筋肉質、左右対称性、知性、立ち向かう力)がある程度ふんわり固定されているので、ある程度「大多数が魅力的だと感じるオス」が決まっていき、その大多数の意見から外れたオスやその遺伝子を引き継いだ子は「美しくない」と判断される可能性があるのかもしれません。

では、「○○にはブスしかいない」現象が起こるとしたら、その地域では何を重視して選り好みが起きているのでしょうか?

 

保護・扶養する能力

 

大ベストセラーとなった「サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福」にも書かれていますが、人間は二足歩行のため、メスの産道が狭くなるため、小さく未熟な状態で出産する必要があります。

シカなどの他の哺乳類は、生まれた瞬間から飛び跳ねたり、自分の力で回避行動をとることができますが、人間の子どもは未熟なままで生まれてくるため、どうしても親の保護やいわゆる「育児」が必要になります。

また、女性の妊娠や出産にはリスクが伴います。そのため、生まれてくる子供が1%でも生き残る確率を高めるためには、先述したような「優秀な遺伝子」をもつパートナーを選ぶことも優位になるのですが、自分を守ってくれたり、育児をきちんと手伝ってくれるパートナーを選ぶことも子の生存確率を高めることに繋がります。

 

good genes と good dad

 

これも何年か前に話題になりましたが、女性は男性を選ぶ際に「good genes」と「good dad」という2つの基準で選んでいるという説があります。

 

■good genes (優秀な遺伝子)

セックスアピールが強い(イケメン、魅力的)、筋肉質、免疫力が高い、若い
▶️健康な遺伝子を重視する

 

■good dad (良い父親)

お金があるか(資源や資源獲得の可能性)、誠実か(長期的な交際が可能か)、子育てに参加的か
▶️出産後の子育てを重視する

 

めちゃくちゃざっくり分けると…

とにかくイケメンがいい!ドキドキする男と結婚したい!という考えのほうが強い場合はgood genes寄り。

顔はどうでもいいけど、お金持ちがいい。浮気をしなくて、安定な人のほうがいい。という場合はgood dad寄り。

ということです。

 

寄生虫の多い生態系では雌雄ともに身体的魅力(good genes)を重視する傾向が強まるらしく、健康な遺伝子を重視するようです。そうなってくると、good dad を選ぶ女性が多く存在する地域は「衛生面において比較的良好な環境」なのかもしれませんし、「○○にはブスしかいない」という現象が起こりうる地域は…

 

  1. 衛生面において良好な環境
  2. 出産後の社会性を重視する環境
  3. good dad(良い父親)を選択したほうが生存確率が高くなりやすい環境

 

といったことも考えられます。

 

結論は出ないけど…

 

「○○はブスしかいない」という言説の背景を主に進化心理学の観点から考察してみましたが、知見が増えれば増えるほど、明確な答えはわかりません。

しかし、人や会社や世界が「選り好み」をした結果は、姿や形や結果(相)に現れます。

あなたが選択した服があなたを作っていますし、あなたが選んだ会社があなたを作ることにもなります。それは逆もしかりです。

このように「相」が決まるまでには、様々な背景があり、それを考察していくことで、目に見えない情報を読み取ろうとするのが「相術」です。

「○○はブスしかいない」という言葉もひとつの相であり、その言葉を発した人にも背景があります。

今後、この発言をした人を見たら「どういうつもりで言ったのか?」という背景を知るために、この記事でご紹介したような内容も含めて問い詰めていこうと思います。

 

にしけい

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書いている

西田 圭一郎 (にしけい)

1987年富山市生まれ。化学系工学修士。商社の開発営業職を辞めて、占いとWeb開発などを生業にしています。趣味は読書と旅とポケモン。文章を書くことが好きです。三児の父。詳しくはこちらから。

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