どうも、にしけい(@nishikei_)です。
今日は大阪は、なんばにあります慈雲山瑞龍寺に来ております。
鉄眼寺(てつげんじ)とも言われております。
鉄眼道光が開建したお寺
鉄眼道光というお坊さんがいまして。
7歳の頃から父の影響で浄土真宗を勉強していたんですが、26歳の頃、隠元(いんげん)禅師というお坊さんが来日して「黄檗宗」に転じます。
(インゲン豆は隠元師の名前から来ています)
鉄眼は黄檗宗をさらに広めるためにお寺を立てたり
仏教の大事な教えがまとめられている大蔵経を出版・普及するために東奔西走します。
中国で学び得た最新・最高峰の仏書を、女性にも分かりやすく説くために平仮名で記載された鉄眼蔵経は当時の人々にはとてもわかりやすく「最高の入門書」とされました。
図書館の走りを作った
今でこそ図書館は当たり前ですが
「だれでも、いつでも、大蔵経を読めるように」と各地に印刷した大蔵経を設置していきます。
これが日本の図書館の走りになったとも言われており、この人がいなかったら日本の教育は今のレベルには達していなかったかもしれません。
法嗣(奥義を受け継ぐ弟子)を立てずに亡くなったことは、仏教界では異例でしたが
歯に衣を着せぬ姿勢が人々の胸を打ったのかもしれません。
そんな鉄眼が建てたお寺に入門志願した男 水野南北
今回、このお寺を訪れたのは
知る人ぞ知る、日本相術の大家、水野南北ゆかりの地だからです。
水野南北は元々、ざっくり言うと犯罪者です。
盗みや傷害事件を起こして、牢屋に入れられていたときに
「これから打ち首になる人は、顔に死相が出ている」ということに気がつきます。
相と運命の関係性に気づいていた南北は
さらに、出牢後に路上占い師から「あなた死相が出てますね」と言われます…。
これはマズイ…と一念発起した南北が運命を変えるべく門を叩いたのが
今回のぶらり手相旅で訪れた鉄眼寺というわけです。
結局、南北は「半年間、不摂生やめたら入門してもいい」と言われ門前払いされちゃうわけですが
その後、床屋・銭湯・火葬場などでアルバイトをして、人間の身体を観察・研究し続けデータを集めました。
手相・顔相・人相を学ぶなら一度は読んでおきたい一冊
飛鳥時代に仏教や建築技法が伝わった時代に一緒に日本に伝わったとされる相術。
それを聖徳太子が元祖としてまとめられたものをベースに
水野南北が10年以上にわたり研究してきた観相術の真髄がまとめられている1冊が南北相法です。
(逆説の日本史を読む限り、聖徳太子が書いたかどうかは定かではありませんが、”聖徳太子ブランド”は商業的にも強烈な宣伝効果があったのかもしれません)
南北相術の凄さは「謙虚さ」と「オリジナリティ」
南北相法は、手・歯・顔・身体を観察し性格・病気・運命を知る術をまとめたもので
現代に生きる僕たちが読んでも非常に興味深いものがあります。
南北相法で僕が感銘を受けたのが冒頭部分です
本書で述べる相法は未熟なものなので読者諸君のあざけりを受けることもあるかもしれない。
私は生まれつき意地張りで負けん気の強いところがあるので、相法についても他人の意見や門人のいうことには耳も傾けずもっぱら自分なりの考えで書いたものである。
したがって字の間違いや偏った論などがあることと思われるが博学の方々に読んで頂いて相法についての議論が盛んになるならば幸いである。
占いの世界において「流派」と呼ばれるものは占い師の数と同じだけあると言っても過言ではありません。
しかし、ある程度体系化されたものがあって、それをベースに少しずつ改良・派生していきます。どちらかというと理系の学問体型に似ています。
水野南北がいた江戸時代も、すでに僕のように占いをお仕事にする人たちがたくさんいたと言われています。
つまり、流派はそれなりにたくさん存在し、観相学を学びたければ誰かに師事することも可能だったはずです。
しかし、水野南北は独自の方法で研鑽を重ねました。
そんな彼がまとめた本です、おそらく当時は相当な話題を呼んだのではないかと類推されます。
過去にご紹介した手相学のコペルニクス的転換の以上に、当時の理論の根本を覆す書物だったのではないかと思います。
偏りが少ない内容の書籍が増えている
占いは占い師によって偏りが出ます。
占い師自身人間だから、その占い師によってくるお客さんにも傾向が出たりするし
同じお客さんを鑑定していても、見るポイントに偏りが出てくる。
これは人間として当たり前のことで
自分でデータを集めた人なら何度もこの「偏り」に「これでいいのか?」と苦心・苦悩するはずです。
水野南北をはじめ、自分が偏っていると認識しているデータや考えをポーンと外に出せることは凄いと思うし、ある意味とても謙虚じゃないと出来ないことだと僕は思います。
最近、たくさんの手相の本が新しく出版されておりますが
当たり障りのない本が多く、「それってどうなんだ」と脳の新たな思考回路を開拓させてくれる本があんまり見受けられないと感じています。
「せっかく出版した本、失敗・批判されたくない…」というのは分かるのですが、もっと大きな偏りが見えてもいい気がします。
自分以外の占い師の「偏り」を知りたい
自分が見落としていた、注意して観ていなかった点にいかに気づけるか。
他人の「偏り」を知ることで、自分の思考の幅が広め、頭を柔らかくする…
占い師というお仕事を続けて行く上で、南北がもつような「素直さ」は非常に重要な性質だと思いますし、それが他の占い師のためにもなると思うのです。
僕ももっと素直に物議を醸すようなことをしていかなければなりませんね…。
鉄眼寺で南北の跡に触れることで、なお一層その気持ちが強くなりました…。
■慈雲山瑞龍寺
大阪市浪速区元町1-10-30
「四ツ橋なんば駅」32番出口が最寄り
にしけい