人はいさ
心もしらず
ふるさとは
花ぞ昔の
香ににほひける
紀貫之はふるさとの梅の花の香とは違い
人の心は「変わりやすい」と詠んでいます。
変わる。
なかなか自分で自分を変えるのは難しいものです。
「前と同じ失敗を繰り返してるなぁ」と反省することもしばしば。
自己啓発セミナーにも行った。
哲学本も何冊か読んでみた。
やりたいことや夢をノートに書き綴ってみた。
自分を変えるために日々奮闘している人は少なくないと思います。
これを読んでるあなたもそう?奇遇だなぁ僕もそうなんですよ。
でも、なかなかそんなすぐにはうまくいかないよね。
何を隠そう、僕たちの体を構成している分子・原子たちでさえ
変化するにはヒトヤマ登る苦労をしている。
Aという物質がBという物質に変化するとき、活性化エネルギーが必要になる。
高校化学でおなじみの下図参照。
山を登り切ってしまえばスルスル…と反応が進んでBになる。
ここで、AでもないBでもない物質を少量添加してみる。
すると、反応速度が速くなる。
つまり、この物質が【触媒】ということになる。
触媒はAと結びついて1回、物質Cを経てからBになる。
一見、反応が長くなっているように見えるけど
通常と違う反応経路を通ることで活性化エネルギーが少なくて済む(図中赤線)。
最終的に触媒は姿を変えず触媒として残るのがポイント。
反応を手助けしてくれるんだけど自分自身は変化しない。
これを人間の心理に置き換えて考えてみると…
「来年こそ結婚したい」
「会社を辞めて自由に働きたい」
「今年のうちにあと3キロやせたい」
「速く走られるようになりたい」
「妖怪ウォッチの新作が欲しい」
などの状況の変化を望んだとする。
今の自分をA、目標を達成している自分をBとしたときに
A→B という反応を起こすことになる。
変化が大きければ大きいほどエネルギー(時間・お金・精神力)をたくさん使う。
真正面からぶつかってうまくいかないと途方に暮れて、途中で諦めて元の自分Aに戻ってしまったり。
例えば
寒い日の朝、布団から出るのはつらいですよね。
何度も布団にひきもどされてしまい、布団から出るには相当な気合いが必要になる。
でも、ここで下記のような条件があった場合…
・大好きな彼があと10分で家に遊びにくる。
・自分の好きな食べ物の香りがする。
・布団の中に猛毒ヘビが入ってくる。
・遅刻だと気づく。
これらが布団から出るという反応を起こすための【触媒】になりうる。
あんなに出たくなかった布団の外の世界へ気づいたら飛び出している…
AからBへの反応経路が1つとは限らない。
徒歩?電車?ヘリ?はたまたジェット機?
目的地に着くまでにはいろんな方法がある。竹馬とかゾウもあり。
そういう新しい反応経路を提案することを仕事にしている人たちがプランナーとかコンサルタントとか呼ばれる人たちだと思う。
旅行代理店や営業職も同様。占い師もある意味そうかな。
仕事にしている人たち以外からも、新たな反応経路が見つかったりする。
何気なく身近な人に話してみたら、新たな糸口が見つかるということも。
もしかしたらネコが大事なことを教えてくれるかもしれないし、たまたまラジオでかかった曲からヒントが得られるかもしれない。本当に何が触媒になるかわからない。
「愚痴っても変わらない」という人もいますが
その人は今一生懸命ヤマを登っている最中なのかもしれない。
あなたに何かヒントを求めているのかもしれない。
化学反応の触媒とは違って、人間の場合は自分も影響を受ける。
自分のアドバイスで問題が解決して「ありがとう」と言われれば嬉しいし、自分の活力になり、自分も変化する。
逆に、愚痴を聞き続けていたら疲れたりイライラしたりするかもしれない。
ときには化学反応の触媒のようにサラッと接することも大事なのかな。
梅の花の香りが紀貫之の触媒になったように、変化しないことが誰かの変化を引き起こす可能性を秘めているかもしれない。
一向に上手にならない(変化しない)僕の文章が、誰かの触媒になりますように。
にしけい