恋愛のご相談はたくさんありますが、一言で「恋愛」と言っても種々あります。「恋愛運」というものが、人や状況によって何を指すのかが異なるので、相談者の方の話をよく聞く必要があります。早合点や思い込みで占うと双方にとって有益な結果をもたらしませんし、自分を占うときも自分は恋愛における何が知りたいのかをある程度言語化することで、より建設的な情報が得られます。
状況を整理するときに、縦と横でマトリクスを作るとわかりやすくなります。このマトリクスは状況において使い分けたり、作り替えたりしますが、今回はこのようなマトリクスを使って、恋愛状況を整理していきます。
恋愛状況を理解するためのマトリクス例
とりあえず、このようなマトリクスを使って状況を整理していきます。
横軸:恋愛への積極性
積極性というのは、特定の対象と近接したい、距離を縮めたいという意欲を指します。例えば、「勉強に積極的」というのは「勉強」という対象との距離を縮めたり、接触頻度を増やそうとしたりする姿勢を指します。恋愛に積極的という状態は、異性もしくは特定の対象との距離を縮めたいという意識が高まっている状態です。
横軸の右側の「消極的」という状態は、「別れたい」とか、「今の関係を解消したい」といったものを指します。「恋人や恋愛対象はいらないよ」という状態も右側に入ります。
縦軸:特定の対象がいるかどうか
好きな人がいるか、好きな人がいないかによって、恋愛の占い方は大きく変わります。全くのゼロから相手を探すのか、既に候補がいるのとは大違いです。特定の対象がいる状態というのは「範囲の限定」が起きていますが、特定の対象がいない場合は他者ではなく「自分のライフスタイル」や「自分のペース」に対しての範囲の限定が起きています。
恋人関係と結婚の違い
蛇足かもしれませんが、恋人関係と結婚の違いを明確にしておきましょう。恋人と結婚は「相手の行動を制限する範囲」が異なります。日本には「告白する」という独特の文化が存在しますが、これは言うなれば「口契約」ということですね。「付き合う」という風に口契約を結ぶと、相手の行動や思考をある程度制限する拘束力が生まれます。
「恋人同士でいましょう」という口約束は、範囲の限定を生み出しますので、人によってはストレスが軽減します。不必要な心配をする必要がなくなるからです。特定の相手の行動が、ある程度特定の範囲内に制限されるため、予測可能になります。予測可能なことは安心につながります。結婚が安心につながるのは、この範囲の限定力が強く広いからです。
恋愛状況の4つの象限と求められていること
改めて、マトリクスを載せておきます。状況によって占いの組み立て方が大きく変わりますし、恋愛ではない要素まで踏み込むことになる場合が多いです。
【A 特定の相手と – 消極的】移行プロセスの最適化
特定の相手と別れたい・関係を解消したい・相手と距離を置きたい・離婚したいという状態です。このフェーズで求められていることは、一言で言うと「移行プロセスの最適化」です。相手との距離感を変化させる前と後で、どのような違いが生じそうか。スムーズに移行するためのタイミングや方法が求められているわけです。移行する際のスムーズさやハードルを占的にすると情報としては価値が出てきます。
【B 特定の相手と – 積極的】実現確率の最大化
好きな人がいて距離を縮めたい・付き合いたい・特別な関係になりたい・結婚したいという状態です。このフェーズで求められていることは、「実現確率の最大化」です。「相性」や「タイミング」といった質問形式になる場合が多いと思いますが、単刀直入に言って「ひとつになりたい」わけですから、その実現確率をなるべく高めたい…というのが本音だと思います。だって、大して好きでもなくちゃんと諦めていたら初めから話題にすら上がらないわけですよ。
「傷つきたくない」「嫌われたくない」という気持ちが強い場合は、先述したAとの中間ぐらいになりますね。場合によってはややA寄りになることもあります。この場合の「実現」というのは特定対象の行動や思考を特定の範囲にコントロールすることを指します。「夢中にさせる」「付き合う」というのは思考のコントロールですね。相手をコントロールできるかどうかの占いは、動物を狩ることができるか、戦争に勝つか、交渉は成功するか…といった占いと似ています。意外と一番血生臭いリアルさが問われるフェーズかもしれません。
【C 相手は不特定 – 積極的】機会創出と自己準備の最適化
好きな人はいないけれど恋愛をしたい・これから好きな人を探したいという状態です。このフェーズで最も求められていることは「機会創出」と言えます。とにかくチャンスをいかに作り出すかです。それに加えて「自己準備の最適化」も必要になります。不特定という状態から特定という状態へ、範囲を限定していく方向に向かうわけですね。場所、時期、相手、出会い方など、とりあえず「最初の一手」を絞る必要があります。最初の一手を思い切り飛び出すためには、足元を固めて平らなところから「えい!」とジャンプしたほうが思い切れます。そのための「自己準備の最適化」です。ある程度自分自身がどのような性質がありそうかを言語化しておいたほうが、思い切れたりするわけです。なので、ここでは「理想の相手は?」というよりもとことん「自分」にベクトルを向けたほうが良い着地が出来ます。
結構よくあるのが、自分について「ダメなところ」ばかり目がいくパターンです。良いところしか見ないのもあれですが、悪いところばかりを見るのもそれはそれで視野狭窄が起きていてフラットじゃないんですね。こういう偏った視野、特に自分のダメなところばかり目がいくと、だいたい依存性の強い相手が集まる場に飛び込んでしまうんですね。そういった意味でも機会創出と同時に、自己準備が必要になります。
【D 相手は不特定 – 消極的】自己の現状尊重と緩やかな準備
恋愛や人付き合いに対して消極的・不特定多数と関係はあるがどの人物ともつながりたくないという状態です。この状態は「自己の現状尊重」が重要になります。先述したように、恋人関係や結婚は「特定の対象に限定する行為」です。まずは、特定の他者に限定しないで生きていることをネガティブに捉えないことが大事です。恋愛至上主義的な価値観で自分をはからなくていいんですね。範囲を限定しないわけですから、ある意味無数に可能性がある状態です。
このフェーズで避けるべきことは、「無理やり自分を定義しようとすること」です。「何者でもない自分」をおそれなくていいんですね。ここで、無理やり「自分とは◯◯だ」とか「自分の好きな人は◯◯だ」と定義しようとすると、ズレが生じる場合が多いです。このフェーズのときは占いにいかなくてもいいです。特に「あんたは◯◯だ!」と定義したがる占い師に当たると最悪です。
あとは、「他人に期待なんかできない」「自分には頼れる人はいない」「この先も好きな人はできない」というのも、実は思い込み(範囲の限定)だったりしますから、この期間はとことん自分の思い込みを捨ててみるといいかもしれません。好きな人ができてもいいし、できなくてもいい。頼れる人がいないかもしれないけど、いるかもしれない。このフェーズは無理に決める必要がないので、このフェーズは占いをするというよりも世間話や何気ない話をするのもいいかもしれません。
「はざま」にいることもよくある
AとDのあいだをウロウロしたり、BとCのあいだをウロウロしたり、A寄りのBだったり…白黒つけず「このあたりかな」という感じでもいいと思います。
占い師さん側としてはA~Dどのパターンがきてもある程度答えられるように、勉強したり準備するのもいいかもしれませんが、大事なことは相談者の方ときちんとコミュニケーションを取ることです。占いを受ける側も、自分自身ともコミュニケーションを取ることが大事です。そのときに、こういうマトリクスがあると結構便利です。
これは恋愛以外に、転職や就職の話にもそのまま使えるので、けっこう便利なマトリクスです。
にしけい