多くの人は「うまくいっているとき」それがなぜうまくいっているかあまり考えません。しかし「うまくいかなくなる」と途端に「なぜうまくいかなくなるのか」と考え始めます。そして「スランプだ」「調子が悪い」「運気が悪い」といった曖昧な言葉に逃げてしまい、これが続くと「世間が悪い」「時代が悪い」「理解してくれない会社が悪い」といった具合に「他者」のせいにして不貞腐れてしまいます。こうなってしまうとかなり危険なのですが、なかなか自分では気付きにくいです。まわりに「今あなたはこうなってるよ」と指摘してくれる人物がいたり、自分から「自分のどこがだめなのでしょうか?」と素直にまわりに意見を求める姿勢があれば、状況がよくなる可能性があるのですが、そうでない場合はちょっときついかもしれません。
とは言いながらも、やっぱりスランプや挫折はキツいです。僕もお仕事柄その渦中にいらっしゃる方からよくご相談をお受けします。それで、いろいろご相談を受ける中で「スランプ」「挫折」「うまくいかない」には大別して2つのタイプにあることがわかりました。
80%は「わからないまま進むタイプ」
まず1つ目のタイプは「わからないまま進むタイプ」です。80%ぐらいがこちらのタイプなのではないかと考えています。「よくわからないこと」「未知のこと」「初めてのこと」を目の前にして、うまくいかないと悩んでいるタイプです。これはよく言えば「挑戦」「冒険」していると言えます。つまり「成長しようとしている状態」なのです。しかし、渦中にいる間は「そんな綺麗事じゃない」と思ってしまいます。種を土に埋めてもなかなか芽が出ない状態です。すぐに発芽するものもあれば、その環境に馴染むまでに時間・水・栄養が多く必要になるものもあります。
下の図で言えば左下の青色のゾーンです。
上図で言えばサイクルは必ず時計まわりに進んでいきます。
「初めてやること」「慣れないこと」が出てきた時、どうしてもそこでストップがかかります。例えば「この人何考えているのか理解できない」という人物に好意を抱く人はかなり少ないはずで、多くの人が「苦手」「避けたい」と思うはずです。
まず、あなたが陥っているスランプは「初めてのこと」「未知のこと」に対するものなのか、そうではないのかを見極める必要があります。
そしてこの左下のフェーズは「わからないこと」「理解できないこと」が原因でスランプに陥っているわけですから、「わかること」をひとつでも多く増やしていけば自然と状況が好転していきます。
【わからないことの原因】
1. 過程を具体的に想定できていない
(目標設定が高すぎる・情報が少なすぎる)
2.手持ちのカードを把握していない
(自分や味方を客観視できていない・数字や金額などの定量性を無視している)
3.相手や他者のニーズを把握していない
(何を求められているのかを把握していない・ニーズとズレがある)
4.こだわりが強い
(エゴが強い・傲慢になっている・思い込みが強い状態)
このフェーズで求められるのは「柔軟性」と「試行錯誤」です。試行錯誤をするためにも柔軟性や素直さが求められます。いかんせん内部・外部どちらについても圧倒的に情報が足りないわけですから「いくらもらってもありがたいです」という姿勢で「わからないこと」を「わかる」ようにしていく必要があります。
ここで「運気のせい」「星まわりのせい」「厄年だから」と言い訳することで行動につながるのであれば、それはそれで良いのですが、何かのせいにすることで行動が縮小するようであれば逆効果と言えます。このフェーズはとにかく「前進」するしかない時期で「わからないことばかり」である以上、裏を返せば「そのできごとの初心者」であり「失うものがない」状態と言えます。
例えば、300年以上続く老舗旅館の女将さんが失敗や失態を繰り返した場合、失うものは大きいでしょう。これまで積み上げてきた歴史や重みやブランドイメージが崩壊してしまいます。しかし、昨日入りたての新人の中居さんなら「やっちゃいました、すみません!」となっても失うものはほとんどありません。新人の中居さんが「もう一回やらせてください!」と一生懸命頭を下げて頼んだら多くの人が「いいですよ」というはずですし、1回の失敗で「はぁ〜もう旅館とかわけわかんないし」と不貞腐れていたらすごくイメージが悪いです。
この左下の「わからないまま進むフェーズ」でスランプに陥っている人の多くが本当は失うものなんてないのに、何かを守っているのです。
「いやいやそうは言っても、これに失敗したらまわりに迷惑をかけるし、損失が出るから失うものいっぱいありますよ」
↑これ、状況を見誤っている人がよく言うセリフです。
「わかる」ためには、情報をとにかく「分離」させて考える必要があります。切り分けて、切り崩して考えていきます。すると「試行錯誤できる余地」が必ず出てきます。つまり「失敗が許される範囲」です。というかほとんどの場合がすぐに「失うものなんてなかった」という思考に到達するはずなのですが…一番厄介なものは「思い込み」です。
そして、この「思い込み」についてはまわりがいくら言っても本人が気づかなければなかなか払拭できません。もちろん誰かの言葉で「思い込みだった…」と気づけるのであれば、それはそれで素晴らしいことです。一気に状況が変わるヒントが出てきます。最終的にこのフェーズはもがくしかないのですが、なぜもがくかというと「思い込み」を消し去るためなんですね。
なので、頑固にこびりついた思い込みが消え去らない限りは、なかなか次のフェーズに進めません。しかし、これが取れた瞬間多くの人が「なーんだ、そういうことだったのか!」と言うこともなくサラッと自然と次のフェーズへと進みます。
いつでも「新人アルバイト」「小学1年生」という雰囲気でやっている人ほど、どんどん成長していき、やれることが増えていきます。
「わかった上でスランプ」
いわゆる「燃え尽き症候群」「次に何をしたらいいのかわからない」「目標が見つからない」「やりたいことがある人がうらやましい」「自分が何が好きなことなのかわからない」こういったタイプは下の図では右上のフェーズになります。
わからないままもがき苦しんでいる左下のタイプの人たちとは打って変わって「情報がありすぎる」「既に正解が何かわかっている」という状況なのですが、これはこれで自分では気付きにくかったりします。
右上のフェーズは「おりこうさん」「真面目」「まわりの期待に応えたい」という気持ちが強い人が陥りがちです。あとは親のしつけが厳しかったとか「こうやったほうが正しい!」「失敗しないように!」といった冒険をさせてもらえなかった、冒険の道を選んでこなかった人が陥りがちです。
「燃え尽き症候群」も「ピーク」を迎えたあとの状態であり「わかっていること」ばかりなので、飽きてしまっている状態なんですね。右上の状態だと気づくためには、今自分がやっていること、自分が送っている生活が「あと50年続きますよ」と言われたときにどう思うか想像してみてください。
例えば
「あなたが今やっている仕事あと50年続きますよ」
「あなたの夫との生活、あと50年続きますよ」
「あなたの給料、あと50年は同じですよ」
こういった想像をしてみます。そのときに「ワクワク」するのであれば、今の状況を続けていてもいいと思います。しかし「ゾッとする」「無理」「やばい」と思うようであれば、思い切ってそれを「捨てる」方が良さそうです。
何度も言いますが「サイクル」は循環します。止まったままということはありません。
「ピーク」を迎えたものは「収束方向」に向かいます。それ以上発展しません。花が咲いてピークを迎えたら、その花がまたつぼみにもどって芽にもどることはありません。花は散ります。
次のフェーズに進めるためには「外部から新しい刺激を取り入れる」ということをしなくてはなりません。
たまに
「とある漫画やアニメのおかげで、今まで売れなかった製品がバカ売れした」
「Aという使い方のために売り出していたけれど、Bという使い方をした人がバズって注文が殺到した」
というような売り上げアップのニュースが流れてきますが、まさにあれです。今まで良くも悪くも安定にほそぼそと続いていたものが「思わぬ刺激」によって状況が変化します。
右上の飽和フェーズはとにかく「外部から何か新しい刺激」を手に入れることです。
子育ての燃え尽き症候群とも言える「空の巣症候群」になった親が、孫が生まれてまた一気に元気を取り戻すパターンもあります。「孫の顔みたい」と望む親の中にも、この右上の飽和したフェーズの人が多いです。あとは「問題のある恋人」や「手を焼く友達」に寄っていきやすいのも右上のタイプの人ですね。
というわけで、右上の「わかった上でスランプ」に該当しそうな人は、思い切って新しい扉を開けてみてください。
同じ商売をするのであれば、製品・サービス・値段・売り先など大きく変えてみるとか…正直、飽和している状態なので「ぬるま湯」に浸かっているわけですから、非常に時間やエネルギーがもったいない状態と言えます。
左下・右上どちらにも言えることですが、とにかく行動して新しい情報や刺激を求めていくことで解決に向かっていくわけです。問題解決のヒントは必ず「外」にあります。もうすでに「もっているもの」で解決するなら、とっくの昔に解決しているわけです。それが解決していないのであれば、打開策は外にあるわけです。
知らない人・会ったことがない人・同じ組織の外の人・普段会わない業界の人…などに会ってみると、一気に状況が変わることもあります。何より誰かに話すことで気持ちが楽になったり、整理できたりしますからね。
にしけい