エクスキューズミーと白いスーツを着た紳士に声をかけます。
学生時代に同じ研究室だったエジプト人留学生のアブドゥルさんに似たピーナツにヒゲが生えたようなおじさんが席を辞してくれたことで、僕は三列のシートの真ん中の座席に腰掛けました。
フランクフルトからマドリッド行きの飛行機は先客が多く座席を選択出来ないと紺色のスーツに身を包んだキャビングアテンダントさんに丁寧に断られ、やむなく真ん中の座席に。
といっても、フライト時間は2.5時間だしそこまで気になりませんでした。
2列の座席の場合、肘置きは3本。
3列の座席の場合、肘置きは4本。
シート数がnとしたら(n+1)本の肘置きに2n本の腕が置かれます。
3列シートの場合、真ん中の座席に誰も座らなければ、肘の数と肘置きの数は同じになるので、1番気楽に肘が置けます。
3列シートに3人座った場合、2本分肘が置けない計算になります。この場合両サイドの人は必ず1本は占有可能で、あと1本分を真ん中の人と1/2本分ずつシェアする形になりますから両サイドの2人は3/2本分の肘置きを使うことが出来ます。
そうなると、真ん中の人は1/2が2本ですから1本分の肘置きしか使えないことになります。
幅5センチほどの細い肘置きに境界線など明確なものを記載する余地はありません。
そもそも、そんなものを描いてしまうと真ん中の人に1本分しか与えられないことを強制してしまうようなものなわけですから、肘置き分の料金を安くして欲しいなどと訴えられた場合、断りにくい状況を作り出してしまいます。
ただやりようによってはメリットもあって、空港会社側で肘置きの自由化を打ち出し、全責任を乗客に丸投げすることで問題を解決すると同時に肘置きの場所や権利を売買するビジネス(ヒジネス)が生まれる可能性も無視できません。
また、この真ん中の人かわいそう問題を解決するためには、座席の両端の肘置きを半分に切断しておく方法があります。
肘置きの面積割合1:2:2:1 を作り出すことで、全員が1本分しか使っていないわけですから、文句は言えなくなりますし肘置きのコストと重量の削減という副産物が捻出されます。これもなかなかありです。
が、真ん中の座席に座っても両隣の人たちが気を遣って肘置きを使わせてくれた場合、1:2:1という世にも美しいピタゴラスの定理ができあがる場合もあります。真ん中に肘置きの富が集中するため文字通り中央政権が始まります。
重ね重ねになりますが、僕は真ん中の席で肘が置けないからと言って気が置けないわけではありません。要するに飛行機の中でやることがないので暇なだけだったのです。
臨機応変に肘を置いてボーダーレスな社会を形成していきたいものですね。
ビジネスクラス座りたい
にしけい