65歳の相方のおばさん「にしけいくん…」

M-1グランプリに出ることになったんですね。それで、相方を探していたら、昔芸人を目指していたという65歳のおばさんと組むことになったんです。打ち合わせでは、僕がボケでおばさんがツッコミということで練習していたんです。

でも、いざ本番になったらおばさんはツッコミを放棄して、自分勝手なことを言ったり、何もしゃべらなくなったりしたんです。もうそうなったら僕がツッコミにまわるしかないじゃないですか。だから、一生懸命ツッコミを入れたんです。

そしたら、場は盛り上がったというか、なんとかおさまったというか、それなりに形になって、ホッとしたんですね。で、ステージ袖にはけたら、おばさんが「にしけいくんは、勝手やね」っていうんですよ。

「なんで打ち合わせ通りボケてくれんの?にしけいくんは(私の言動に)敏感に反応してツッコミすぎや」っていうんですよ。腹が立ちました。それで「もう解散や」って言われて、僕がフラれた形になって、余計に腹が立ったところで目が覚めました。夢だったけど、すごくリアルで、起きてもおばさんにムカついていました。

でも、おばさんが言っているのも確かで、最近の自分はツッコミにまわりすぎていた気がします。「敏感に反応しすぎ」というのはその通りかもしれません。

 

「ツッコミ」は、ボケの間違いを要所で指摘し、観客に笑いどころを提示する役割である。
漫才 wikipedia

 

ツッコミは「正しさ」「みんなが思っていることを代弁する」みたいな、「大衆性」が必要になります。間違っていることを正す。いつから、僕はツッコミにまわっていたんだろう。全然正しくないのに。正解を提示する?場を誘導する?何、司る側に立とうとしているんだ。「正しい道はこっちです」って、光る棒を振ってる。マジで夢の中のおばさん、的確すぎる。むしろ、リアルの僕にちゃんとツッコミ入れてるじゃん。なんだあのおばさん。もっとムカついてきた。

何、自分が「正解側」で、自分は「わかっている側」だと思っているんだ。それこそが間違っている。何もわかっていないし、何も正解じゃない。人間社会に順応した顔しやがって。何、コメンテーター側みたいな顔してんの。

最近の自分への違和感の原因はこれだったのかもしれない。

ライブを会場の後ろのほうで壁にもたれかかって腕を組みながら見て、「まぁ、最前にいかなくてもライブ楽しめるし」「後ろから見た方が全体見えるし」みたいな、達観したフリしてたわ。みんなすまん。混沌に飲み込まれるより、秩序を迎合するほうがダサかったわ。

ちょっと遊びにいってくる!ご飯はいらない!

にしけい

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書いている

西田 圭一郎 (にしけい)

1987年富山市生まれ。化学系工学修士。商社の開発営業職を辞めて、占いとWeb開発などを生業にしています。趣味は読書と旅とポケモン。文章を書くことが好きです。三児の父。詳しくはこちらから。

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