アフォーダンスという考え方があります。心理学者のJ.J.ギブソンが提唱した概念で、「環境が生物に提供する行動の可能性」を指します。簡単に言えば、物や空間が「何ができるか」を示唆する性質です。
例えば、和室と洋室では異なるアフォーダンスが生じます。和室だと畳なので、床に座る、横になるといった行動を誘導しますが、洋室だと椅子に座るといった行動を誘導しやすくなります。
よく「家の中の動線はどうする」という話になったりしますが、これもアフォーダンスのひとつで、細かいところだとドアノブひとつとっても、「手で掴んで回す」という動きを誘導します。
僕たちの暮らしはひとつひとつが、何かに誘導されています。能動的に動いているように見えて、ひとつひとつが何かへの「対応」だったりします。特定の対象を自分にとって都合の良いように作り変えることも、一種の対応なので、「自分の意思で動く」ということは真に存在しないとも考えらえます。
家の間取りを見させてもらう中で、この「アフォーダンスによる蓄積」のようなものを感じることがよくあります。こういう家の形だったら、こういう動きになるし、こういう動きを続けていたら、こういう結果になるよね…ということがよくあります。旅行やお出かけによる方位取りも良いのですが、観察している限りでは「日々の移動の蓄積」のほうが大きく現象に作用しているように見えます。
最近、「中学生の娘が学校に行かない」「不登校の小学生を学校に行かせるには?」といったお悩みを抱える方が増えてきていますが、家の中の配置や部屋を変えることで、その後の行動パターンが変化して、学校に行くようになった…という場合もけっこうあります。家の中が「ちょっと違う」だけで、その後に誘導される行動が変化するんですね。
スマホのメニュー画面のアプリの配置を変えるだけでも、小さなアフォーダンスの変化が起きます。開くアプリが変化することによって、その先の行動が変わってきます。極論ですが、勉強に集中したいときにSNSやゲームのアプリを全て消去することで、その後の行動や結果が変わってくるはずです。
古典的な家相や地相の知識も重要なのですが、結果を変えるための方策は他にもいろいろあるので、特定の知識体系にこだわらず、組み合わせながら流れを変えていくことが大事です。
にしけい