実家からずっと使っていなかった電子ピアノが届きました。
犬とネズミとウサギと芳香剤の臭いが染みついたピアノ。
頑丈に絡みついたホコリを落としながら、誰にも触られてこなかったことを実感。
ピカピカに磨いて早速、鍵盤に触れてみる。
遠いようで近い未来に向けて練習を始める27歳。
まだまだ指がぎこちない。
初めて”女性”に触れる思春期の少年のような震え。奮え。
練習中、ふと思った。
「レ」と「ミ」の間の音を出したいときはどうするんだろう。
「レ」だと低いし、「ミ」だと高い。
黒い鍵盤を押してみても、出したい音じゃない。
でも、確かにその音はこのあたりにありそうなんだ。
占いにきてくださるお客さんと話していてもときどき思う。
人はAでもないBでもない簡単には分類できない感情をもっている。
信じたいけど信じていいのか?
好きだけど、好きになっていいのか?
やってみたいけど、やっていいのか?
どの鍵盤を押せば、この気持ちにピッタリの音が出るのか。
それを一緒に探す。
「この音とは違いますか?」
整理をしながら
目には見えないけど、確実に存在する鍵盤を叩く。
…音が鳴る…これだ!
気持ちよく見つかるときもあれば、反省することもしばしば。
ピアノが出せない音もあるだろうし、名前が付けられていない色もたくさんある。
そんな曖昧な音や色をまず認めてあげる。
本人は認めたくないかもしれないけれど、代わりに認める。
だって、そんなどこにいってもはみ出してしまう気持ちが
必ずそこには「存在している」んだから。
幽霊も宇宙人も妖怪も否定しないで、ナデナデする。
そんな姿勢で、今後もお客さんや自分と向き合えたらなって思う。
にしけい