「しょうがない」というのは純度が高いときに起こる愛しい状態

子供や生徒さんと接していると「しょうがないな」と思うことが結構あります。しょうがない。口にすることもあれば、心の中でつぶやくことも。「しょうがないな」が口癖になっているかもしれません。

この「しょうがない」という言葉は「仕様がない」と書きまして「仕様」が「無い」ことを指します。

「仕様」は「手段・方法」を意味します。「手段や方法がない」というところから「諦め」の意味に転じているようです。

この「仕様がない」という言葉は一般的にはネガティブな意味として解釈されますが、僕は非常に愛ある温かい言葉だと思います。

手段や方法というものは「ルート」を指します。「手段」や「方法」を考えるときには必ず「目的」が存在します。大阪から仙台に行きたい。大型犬を飼いたい。気になるあの人と交わりたい。月の収入をあと5万円増やしたい。あたたかいコーヒーを飲みたい。「目的」が明確だからこそ手段や方法が見えてきます。明確なときほど「分離」が起きています。

 

反対に「仕様がない」状態というのは、目的と現状の分離が起きていない状態です。

目的と現状が混在・同化している状態です。スタートとゴールがくっついている状態です。

現状と目的が同化しているので、その間に手段や方法が生まれてきません。これが「仕様がない」状態です。

 

例えば、誰かが好きで「一緒にデートしたい」というのは目的があります。「好き」の先に「目的」があるわけです。デートの内容や最終目的は人それぞれですが、何かしら「こうありたい」とか「こうしたい」というイメージが湧いていたら、それは「目的が明確な状態」と言えます。

しかし「ただ好き」という状態で、それ以上デートも何も求めなければ「現状」と「目的」が限りなく混在している(既に達成されている)状態と言えます。

サッカーがただただ楽しくて夢中になっている状態、その先に「大会で優勝したい」「モテたい」「チヤホヤされたい」といった目的が無い状態は「しょうがない状態」と言えます。

つまり「しょうがない状態」というのは「純度が高く、打算やエゴが入っていない状態」とも言えます。

なので「◯◯が好き」というだけの状態は誰にも介入できない、どうこうすることもできない状態と言えます。好きになってはいけない人を好きになるとか、犯罪につながる趣味嗜好でも、「好き」自体には他者が賛否を論じる余地がない「しょうがない状態」と言えます。つまり「好き」「嫌い」「夢中」といった状態は何ものにも介入できない純度の高い状態と言えます。

 

 

 

しょうがない=純度が高い

 

漫画が読むのが好きで好きで、ご飯の時間も、寝る時間も関係なく漫画を読み続けている中学生の男の子がいたとします。

母親から「漫画ばっかり読んでないで勉強しなさい」とか「いい加減にしなさい」と言われても、漫画を読むことに夢中になっていたら、それはもう「しょうがない」んですね。純度が高い状態で揺るがない状態です。

しかし、「漫画を読むこと」の先に「目的」や「打算」や「意図」があったりすると「仕様がある」状態ですので、純度が低く、それは長く続かない可能性があります。(「勉強のために漫画を読むぞ」とか「彼と話を合わせるために漫画を読むぞ」とか)

いくら言葉でそれを「好き」「やりたい」と言っても、純度が低いと脆く崩れ去り、なかなか長続きしません。逆に言うと自然と長続きしていることは純度が高く「しょうがないこと」だと言えます。

 

誰かに対して「しょうがないな」と感じたのであれば、それは諦めでありながら、全面的に受け入れている状態ということです。夏が暑く、冬が寒いように「しょうがない」ことは揺るがないのです。

それを許して受け入れているあなた自身も非常に愛情深いというか、自我を消し去っている状態と言えます。逆に「しょうがないな」とよく言われる人は、その相手に全面的に受け入れられている状態と言えます。

この「しょうがないな」という言葉を自分に向けてみるとどうでしょう。自分で自分を全面的に受け入れることになります。自分の純度が高まり、自分という存在が安定に長く続くようになります。

ダメな自分も、うまくいかない自分も「しょうがない」と受け入れてあげられると、そこから少し違った視座が開けていくかもしれません。

他にやらなきゃいけないことがいっぱいあるのに、こんなブログ記事を読むなんて。しょうがない人ですね。

にしけい

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書いている

西田 圭一郎

1987年富山市生まれ。工学修士。
商社の開発営業職を辞めて、占いや相術を生業にしています。本と旅とポケモンと文章を書くことが好きです。黒も好きです。どの国に行ってもスチューデント扱いされます。

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