【フラスコから水晶玉へ】理系出身者として「理系」と「占い」の共通点を語っておきます

その分野を離れて5年以上経っていますが、元々僕は理系(化学)をやっていました。高専の卒研テーマはFRP(繊維強化プラスチック)に関することでした。大学〜大学院では有機化学の研究室に所属し、プラスチックやフィルム関係の開発営業をしていました。

現在はフラスコを振ることもありませんし、スケールアップのための計算をしたり、NMRもIRチャートを眺めたりすることもありません。気づいたら、化学とは全く関係のない世界で日々を過ごしています。

なので、こういった経歴があったことを話すと、「え?全然今の仕事と関係なくないですか?」と驚かれることが多いです。元理系と名乗るのは申し訳なくなるほど、理系の端くれとしてやってきた僕ですが、この経歴が今の占いのお仕事に生きていないかといえばそうではありません。むしろ、この経験があったから、今のお仕事が成立しているのではないかと考えています。

 

オタク耐性

 

基本的に理系はオタクが多いです。今でこそ「オタク」という言葉が市民権を得て、「ちょっとアニメが好きです」みたいな人たちも「俺、アニオタだから」みたいな感じで軽々しく使われていますが、違うんですね。本当のオタクは自己紹介やプロフィール文で「オタですw」とは言いません。もうね、真のオタクは自己紹介しなくても分かるんですよ。まず、基本的にニオイでわかります。オタクはくさいです。もう一度言います。オタクはニオイでわかります。オタクはくさいです。

ここで指す「におい」とか「くさい」というのは、揮発性化学物質が鼻腔に入り嗅上皮に到達する生理学上の現象とは異なります。確かに、オタクには体臭や服が芳しい方々も多いのですが、それとは異なる「ニオイ」があるんですね。「オタクくさいな」というものが滲み出てしまうんですね。

話し方というか、醸す雰囲気みたいなもので「あ、この人オタクだな」と、分かってしまう、バレてしまうものなんですね。僕はブックオフで4年間ほどアルバイトをしていましたし、腐女子の姉とSTARWARSの小説ガチオタクの母と暮らしていたので、よくわかるんですね。普通っぽい雰囲気にして隠そうとしていても、だいたいわかるんですね。

オタクって基本的に「何かよくわからない仮想敵」と戦っているんですね。それは過去の自分であったり、先人たちだったり、ライバルだったり。別に掘り下げなくてもいい、考えなくてもいいところをああでもないこうでもないと、妄想(シミュレーション)するんですね。占い業界(?)にもオタクが多いですし、妄想力が重要な分野だと思います。

 

断片的な情報から目に見えない世界を見ようとする

 

このオタク特有の妄想・想像・シミュレーション能力が占いにも生きてくるんですね。

見る人が見たらただの曲線が山なりに描かれているプロトンNMRチャートを見て、「この10 ppmあたりピークどんな状態のカルボニル基なのか?」「アルデヒドなのかカルボン酸なのか?」「メチル基の影響で低ppmにシフトしているのか?」とか、あれこれ想像(シミュレーション)しなければならないんです。

五感で察知できる断片的な情報から、目に見えない情報を見ようとする。これは理系も占いもほぼ同じことをしています。その観察する対象が変わっただけで、基本的に「見えないものを見ようとする」という点では全く同じなんですね。それで、この見えないものを見ようとする意欲というか、好奇心みたいなものが強い方がどちらの分野にも適性があるんですね。

また、どちらも目に見みえるものから分かった目に見えない世界を他者に説明しなければなりません。研究発表の場と、占いの場はどちらも同じで、目に見えない世界のことを言語化して、他者に伝えるという点では全く同じことをしています。

 

混沌耐性

 

理系の研究ではとにかく失敗の連続です。研究テーマによっては全く結果が出ないまま数年を費やすということもザラです。「結果が出るかわからない」という状態が続きますし、結果が出たら出たで「なんの価値もなかった」ということもザラです。とにかく混沌を抱えながら日々を送ります。

占いもよくわからないことだらけです。かれこれ15年以上やっていますし、それを仕事にしていますが、やっぱりわからないことはたくさん出てきます。当たったことも、当たらなかったことも、それっぽい理由をつけて説明することはできますが、実際はよくわかりません。

実は科学の分野でもメカニズムがよくわかっていなことがたくさんあります。とある学会発表で権威のある先生がとある反応結果について発表されていましたが、最後の最後に「実はまだこの反応はメカニズムがわかりません」と付言されていたのをよく覚えています。学生ながら「こんなすごい教授でも、よくわからないことがあるんだな」と思い、聞いていました。

強引に納得しようとしたり、「これが理由だ!」と思い込もうと「解釈」することは簡単です。でも、それは「より深いところにある大きな何か」を掴むための妨げになります。混沌を抱えながら、よくわからないものに身を任せながら暮らすのは大変ですし、安心できないかもしれません。しかし、「すぐにでもこの混沌から解放されて楽になりたい!」と考える人は、科学も占いも向いていないかもしれません。

相談に来る人たちも何かしらの混沌に浸っている場合が多いです。そのような状況を共有するときに、ある程度の混沌耐性のようなものがないと、この仕事は務まらない気がします。完全に分かりきっていないツールを使いながら、よくわからない状況を打破しようとする。混沌だらけです。

 

論理的思考が求められる

 

これは占い以外でもそうですが、何かを理解したり、誰かに何かを説明するときに論理的思考は役に立ちます。下記の動画でも説明していますが、「占い=定義ゲー」みたいなところがあります。定義=範囲の設定です。

 

 

論理的思考は範囲を明確に定めて、その中で道筋を立てて結論に至るプロセスを指します。前提・推理・結論の中で範囲(境界線)を意識する必要があるのです。

前提の境界線が曖昧だった場合、推理・結論ともに破綻してしまいます。例えば、「子どもは外で遊ぶべきだ」という前提があったときに「子ども」が何歳から何歳までを指すのか?外とはどの範囲を指すのか?を明確に定義しないと議論が成り立ちません。

悩んでいるときやうまくいかないときってなかなかうまく言語化できないこともあります。言語化できないということは、この前提から結論に至るまでのプロセスにおいて明確に範囲を設定できない状態なわけですね。自分が誰に苛立っているのか?何に怯えているのか?どのようなことに不安を感じているのか?

うまく言語化できない場合もあります。まず、この言語化(範囲の設定)を一緒に行うことが大事です。自分が本当に求めているものが何なのかわかっているようで、わかっていなかったりします。

論理的思考は理系以外の分野でも必要な能力ですし、占いにおいても役に立ちます。なので、卒論発表や修論発表で「恐怖の素人質問」に詰められた経験は全く無駄ではなかったわけです。

反対に占いで得た知識や考え方も他の分野で通用するものがたくさんあると考えていますし、何かを学ぶ上で線引きやカテゴリー分けをする必要はないと考えています。

 

ふんわり関連しそうな本

 

野矢 茂樹『論理トレーニング101題』
https://amzn.to/4j0IqrT
論理的思考を身に付けたい人の一助になるかも?

橋本治『わからないという方法』(集英社新書)
https://amzn.to/4cnwyO6
混沌を混沌のまま扱う姿勢について書かれています。

森博嗣『孤独の価値』
https://amzn.to/42G7ApW
理系出身者の著書。「そうそう、これこれ」な一冊。

 

水晶玉占いはやったこないですけど、ちょっとそれっぽいタイトルにしたくて水晶玉と書きました。あしからず。

にしけい

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書いている

西田 圭一郎 (にしけい)

1987年富山市生まれ。化学系工学修士。商社の開発営業職を辞めて、占いとWeb開発などを生業にしています。趣味は読書と旅とポケモン。文章を書くことが好きです。著書は50冊以上。三児の父。詳しくはこちらから。

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