情報をもたないコミュニケーション(NIC: Non-Information-Communication)の重要性

僕はどうしてもその情報に理由や原因や目的があるのかを考えてしまう癖がありまして。コミュニケーションの中でも「なぜこの人はこのようなことを言うのだろうか」といった目的や意味を考えてしまいます。これはおそらく工学系の大学院の研究や研究発表といった場で「なぜ?」「根拠は?」といったことを常に意識させられていたからだと思います。

言葉や情報を精査審議する癖は社会人になってから少しマイルドになったのですが、大学院を修了した直後会社に入社した際にバリバリこの理系の考え方だったので、会社内での先輩や上司たちの意味のないやりとりや根拠の薄い判断などにイライラしていた時期もありました。今思うとめちゃくちゃ尖っていたと思います。同僚が喫茶店でランチをとるときも意味のない雑談に嫌気がさして1人でご飯を食べていました。今思うと本当にとっつきにくい若手社員だったと思います。

当時の僕は「無駄なコミュニケーション」や「意味のない情報」に対して敏感になっていたと思います。発表資料のパワポや論文紹介の資料も修論も「無駄なこと」なんか書き加えようものなら「これはなんだ?」と睨みつけられ罵られてきたわけです。高専の生物学のテストでルイパスツールの「スワン型フラスコ」と答えた横に白鳥のイラストを描いたで森田先生に「減点するぞ!(殺)」と書かれたぐらい理系では無駄なこと、意味のないことを嫌います。

しかし、世の中には「情報をもたないコミュニケーション(NIC: Non-Information-Communication)」があります。「コミュニケーションを取ること」自体が目的となっているコミュニケーションです。挨拶などもそのひとつです。親しい人たちのあいだで交わされる「おはよう」とか「おやすみ」とか、近所の人たちの「今日はいい天気だねぇ」みたいな話です。ファミレスで何時間も話していてる人たちもいます。会社の愚痴を居酒屋でこぼす人たちもいます。

過去の僕でしたらそういった会話は「一切無駄なこと」「時間がもったいない」と考えたでしょう。しかし、実際に「情報」や「意味」や「目的」をもつコミュニケーションのほうが圧倒的に少ないです。

また「情報をもっている」と感じる判断軸も自分本位です。コミュニケーション自体が目的の場合もありますし、「おはよう」ひとつで非言語情報を読み取る人もいるでしょう。「今日は元気がないな」とか、LINEなどでも「おはよう」という返しが遅いと「忙しいのかな」「大変なのかな」といった情報を読み取れます。

どうしてもコミュニケーションの内容に厳しくなりすぎて、コミュニケーション警察みたいになっている人がいたら気をつけてください。僕自身もそうなっていたように、かなりギスギスツンツンした印象を与えると思います。もちろん情報をもつコミュニケーションを求められる場面もあります。

「発熱はいつからありましたか?」と聞かれて「なんかゼェゼェ言って大変で、私も眠れなくて…」と答えていては必要とする情報が得られずコミュニケーションとしては破綻しています。(それでも察してくれる人がいますが、察してくれる人の時間を奪い、負担を考えると求められる情報に的確に答える意識は必要ですけど)

SNSや会話で他者の発言につっかかったり、イライラしたりしてしまう人は「特に明確な目的もないコミュニケーションもあるんだ」ということを頭のどこかに置いておいてください。コミュニケーション自体が目的の場合もありますから。結婚記念日とか誕生日とかそういうお祝いごとも、やることに意味があったりします。何度も言いますが、NICがほとんどだと思います。言葉の意味に捉われ過ぎると、読み取れない情報もありますしね。

この記事も含め、僕が書く記事の9割以上が情報をもたないコミュニケーションな気がしてきました。

おやすみなさい。

にしけい

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書いている

西田 圭一郎 (にしけい)

1987年富山市生まれ。化学系工学修士。商社の開発営業職を辞めて、占いとWeb開発などを生業にしています。趣味は読書と旅とポケモン。文章を書くことが好きです。三児の父。詳しくはこちらから。

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