占い教室を始めて早いもので半年。
1回の教室で2、3人教えさせてもらっています。
教える生徒さんの人数を不必要に増やさないように心がけております。本当に学びたいという熱意のある方のみに、丁寧に。やるからには徹底的に基礎から実践で使える言葉選びまで伝えます。
「1日で手相をマスター」とか「5回受ければ認定証を」といった謳い文句の手相セミナーや検定を行っているところもありますが、僕はちょっと疑問に思います。
短期集中系セミナーはある程度体系化された知識を身につけることはできると思いますが、手相の技術自体は一朝一夕では身につかないと思います。
セミナーなどで習ったことを丸暗記して(ひどい場合はテキストを見ながら)鑑定する方もいらっしゃいますが、うーん、それでいいのかなぁと思ってしまいます。
最初は誰でもそういうカンペを見て占う時期があってもいいと思いますが、プロとしてお金をいただく以上プライドをもってやって欲しいです。
一部のお金儲けに走る人たちが中途半端な手相の講座をやることで、結局占いへの不信感が高まり自分たちの首をしめることになると思うのです。
他所は他所なので結局のところ意欲があり、熱心に研究・探求し続けた人が残ると思いますが、僕はとても手相が大好きなので純粋に手相のおもしろさをよく知らず嫌悪感をもたれるのは嫌だなと思うのです。
と、自分ヨガリなことを述べてばかりいますが…
学んだことをどう生かすかは、受け手の自由ですからね。
[参考記事] グミとリンゴとメモの話
「教える」といっても教わることばかり
手相教室で生徒さんにいろいろとお話していた中で気づいたことがたくさんあります。
そのひとつに手相の線を判断する上で感覚(無意識)から生じる論理性というものが存在するんじゃないかなという考え方があります。
感覚的な理論?
何おかしなことを言っているんだと思うかもしれないんですけど、研究室で有機合成の研究をしていたときに感じたものにも似ています。
ある化合物を合成しようとフラスコに試薬を入れて混ぜます。
この一見簡単な所作でも、最初のうちは失敗したり、目的とは違う化合物が合成されたりします。
先生や先輩に見てもらったり、先輩の実験ノートを何度も見直させてもらっても、うまくいかないのです。
試薬Aと試薬Bをアルゴン置換下で溶媒Cに溶解させ反応を追跡するだけ。
頭ではその理論を理解しているのですが、再現性が取れない。何かが違う。
こんな簡単なことができないなんて…自分は能力が無いのかと途方に暮れた日もありました。
それでも、先輩たちに根気強く指導してもらって半年ぐらいかかってようやく目的の化合物を合成できるようになります。そして、不思議なことに一度できるようになると特に意識しなくても合成できるようになるのです。
新しく入ってきた後輩に同じ反応を説明します。
「これとこれをこうやって混ぜるんだよ」
先輩に教わったように教えます。でも、やっぱり最初はうまくいきません。
悩む後輩にいろいろアドバイスをしますが、やっぱりうまくいかない。それでもいつの間にかできるようになる不思議。
自転車の乗り方を教えるとき
サドルに座って両足でペダルを漕ぐ。これだけなのに最初はできません。
アドバイスとして
「ペダルを踏み込む力を20〜50MPaで、右足を踏み込んでから左足を踏み込むまでに3秒が適正で、視線は4メートル前を…」などと口うるさく数値で説明しても乗れるようになる子どもはいないでしょうね。
手相の鑑定もこれに似ています。
線の判断や見方は、ある程度は説明できるけれど、言葉では説明できない「何か」があります。
なぜその判断をしたのか?ということは感覚的で、その判断をもとに論理的に組み立てます。
その感覚を養うには数多くの手相を見て答え合わせが必要になります。トライアンドエラー。
試薬を混ぜてはTLCで反応の進行を確認する作業と本当に似ている。
手相教室で僕自身気づかされることはたくさんあります。
偉そうなことはまだまだ言えないし、僕自身も死ぬまで発展途上。
もしかしたら、その感覚をうまく伝えられる言葉や方法があるのかもしれない。
だけど、一言だけ言わせて欲しい。
手相を見ていろいろ情報を得られるようになりたいのであれば
たくさん人の手を見て答え合わせをしてください。地道に。コツコツと。
それが一番の近道だと思います。
[参考記事] 時間tのエネルギー量の凄まじさ
にしけい