はじめに
本書の目的は1つです。「手相はもっと自由で何でもできる」ということをお伝えしたい、それだけなのです。そのためにはより抽象的な概念を用いて手というものを俯瞰しなければなりません。タイトルにありますように「陰陽時空間手相術」は、より手相を「より自由に」「より柔軟に」「より高い的中率に」するために模索した結果、導き出したひとつの答えです。僕は理論よりも実践派です。手相というものをいかに人々の役に立てるかを研究しています。僕は、ただ暗記や知識だけで終わってしまう手相術には興味がもてませんし、大衆から注目を集めるためだけのエンタメ用に脚色された手相術にも興味がありません。いかに手相を活用するか?活用できるか?これを探求した結果、抽象的な概念である陰陽時空間手相術を編み出しました。
本書はあえて読みやすいように平易な言葉で表現することを心がけています。早い人は20分ほどで読めてしまうかもしれません。シンプルな内容です。もし、途中でよくわからない点があっても、とにかく読み進めてください。何度も読んでいるうちに理解が深まるはずです。本書があなたの手相探求のお役に立てることを願っています。
画像は二次元世界
まず、手の中に、というより「面」の中には「上下」があります。上と下です。我々は三次元空間の中にいると認識していますが、見ている世界は二次元です。遠くにある大きなものと近くにある小さなものでは本来は判別がつきません。しかし、それを補正する何か(四次元?) があるため、奥行きを認識することができます。何度も言いますが、我々が現在視認している世界は二次元です。この上下左右にどのような意味合いがあるのか。それを意識することで、手相も格段に抽象度が増し、より自由で瞬間的で的確な相の判断ができます。
相とは何か?
相とはその瞬間に存在する上下左右に広がる二次元的な1枚の絵です。英語ではartと言ったりもしますが、日本語になっている「アート」(芸術)のような側面もあります。相がどのように見えるかは千差万別です。同じ対象物を観察していても見え方や感じ方は変わります。それでもある程度の範囲で感じ方は収斂していきます。大半の人たちはモナリザを眺めて、描かれている人物の性別を女性だと判断するでしょう。90%以上の高い確率で女性だと判断された場合、「科学」とか「統計学」といった再現性の高い技術に見えなくもありません。しかし、占いおよび相術は科学や統計学ではありません。
「モナリザに描かれている人物は何を考えているでしょうか?」という質問に変えた場合、驚くほど回答に差異が出るでしょう。しかし、この質問に対しても「ある程度の範囲」で回答が似通ってくる可能性が高いです。
大きく分類して「悲しそうな顔をしている」「少し嬉しそうな顔をしている」といった回答に集約するのではないかと考えられます。この観察物がモナリザではなく「手」や「顔」になっただけのことで、相は「art」なのです。どう感じるかは自由なのです。まず、これが根底にないと相術は陳腐なものになるし、誰かが感じた線の意味をそのまま暗記するだけのつまらないものに成り果ててしまいます。
また、「相」に「phase」という単語を当てたりもします。
■phase
1. 限られた見地から見た様相や変化
2. (移り変わりのなかの) 段階・時期
どちらも「変化や流動性があるものの中の一部分を切り取っている」という共通点があります。動画から特定の場面を写真として切り取るような。相はリアルタイムで変化します。これが相術の醍醐味です。手相の中にもphase(季節)が存在します。本書では、手の中にある「季節循環」を使って手相を読んでいく手法をご紹介していきます。これによって何が可能になるかというと、手相がこれまで苦手としていた「来月どうなるか?」とか「バイオリズム」のようなものが読み解けます。使い方によっては「彼の気持ちを知りたい」というときに対象者情報なしでその場にある手のみで他者の気持ちを推測することができます。相術を学ぶ上で肝に銘じておいて欲しい言葉があります。それは「一事が万事」という言葉です。よく知られている言葉ですが、対面でご相談に乗っていたり、文献を調べたりしている中で、この言葉の重みを実感します。全ては臨機応変に変わるわけです。現状に合わせて対応しているのは自分の行動だけではなく、ありとあらゆるものが対応・感応しているのです。万物臨機応変、一事が万事。特定の瞬間を切り取った「相」を読むことは、対応した後の結果を読むことになります。キリンがより高い位置にある樹葉を食べるために進化を遂げたように、「潜在的意思情報」がそのまま形になります。意思(方向性)が形を作り、形が意思(方向性)を作るのです。なので、相は結果(過去)であり原因(未来)なのです。これを踏まえた上で手や人の顔を観察すると機能や意思が一寸の狂いもなく形に反映されていることに美しさを感じてしまいます。特に家相や墓相はよりエネルギーと時間がかかっているだけあって非常に情報として色濃く出てきます。本書では手相以外の相術にも応用できる普遍的な規則もご紹介していきます。抽象的すぎて使い方がわかりにくいかもしれないので、ちょっとした補足も加えながらご紹介していきます。
A5判 92ページ