2年ぐらい前になりますが
“身の危険を感じる体験をすると、その「記憶」が子々孫々に遺伝して受け継がれる”
という研究結果をエモリー大学の研究チームがまとめ、英科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」に掲載されました。
この研究結果が個人的に面白かったのでご紹介させていただきます。
ざっくりどういう研究か説明すると
1. マウスに桜の香りを嗅がせた後、電気ショックを当て続けた。
2. いずれ、そのマウスは桜の香りを嗅いだだけで電気ショックにそなえて身を縮めるようになった。
3. そのマウスの子孫は、他のマウスに比べ桜の香りに対して嗅覚が敏感になっていた。
つまり、マウスは桜の香り(=危険)により早く対応するために”進化”していたということになります。
かけ算を知っている親から生まれた子はかけ算が得意になる?
例えば
あなたが小学生のころ、極悪非道な熱血教師にピストルを突きつけられて、「九九を全部言えたら帰してやる…言えなかったら…」と脅されたとします。
「いんいちが…いち…、いんにが…に…」と一言一言、確かめるように、生を噛みしめるように九九を言います…
「…くく、はちじゅういち…」言い終わった瞬間、教師はニコッと笑って「よく、出来たな!帰っていいぞ!」と言って次の児童を呼びます。
「おーい、ヤマダ、入れー」
全身の汗を感じながらホッと一安心、教室を出たあなた。
「ヤマダ、頑張れ…!一緒に帰って、スーファミのドンキーコングしような…!」
心の中で願った次の瞬間、空を裂くような銃声が。
え…!
教師が血まみれで教室から出てくる。
「ヤマダ、あれだけ教えたのに、三の段、全然できてねーじゃねえか!」
次の日、ヤマダをはじめ何人かの机の上には花が手向けられていた…。
という体験をしたとします。
(極端すぎる例えですが、あくまで例え話です)
このような体験・学習をしたとき、あなたの子どもや孫は「かけ算」に対して特別敏感なセンサーをもつことになります。
「3」という数字を見ただけで、「さんいちが…」と口にしてしまうような子どもが生まれくるかもしれません。
つまり、あなたがかけ算を「学習した場合」と「学習しなかった場合」では、生まれてくる子孫のかけ算に対する学習能力に差が出てくるのです。
ということは、親の能力や経験値が生まれてくる子どもの能力に大きな影響を与える可能性があるということなのです。
ここで、少し話題が逸れますが…
自分が生きた証を残すには?
僕もあなたもいずれ死にます。
個人差はありますが”後世まで自分が生きた証を残したい”という気持ちは誰しもが一度は持ちうると思います。
でも、そう簡単に後世に自分の名前ややったことを残せるのか…
どうせ自分はちっぽけな普通の人でしかない…そんなことは不可能だ…
「自分の情報」を残すには?
今のところ、この2つの方法が考えられます。
1.書籍や壁画など物質に刻む
2.自分で子孫を残し遺伝情報を残す。
さて、ここで上述したエモリー大学の研究結果を鑑みてみます。
カップルや夫婦に優しくしておくと遺伝子的にお得?
例えば、あなたはAさんが崖から落ちそうになっているところを助けて、Aさんの脳にあなたの存在が強烈に記憶されたとします。
上記の理論からいくと、Aさんの子どもはあなたの顔や声に特異的に反応するようになります。
Aさんが死んだあと…
Aさんの子どもがAさんの部屋を整理していたときに、たくさんの写真からあなたの写真を見つけます。
たくさんの人物の中から、あなたの顔に特異的に反応したため写真が見つかったのです。
写真にはAさんの筆跡でメモが。
あなたの名前が書かれ、その横には「私の命の恩人」と書かれています。
Aさんの子どもは、あなたの存在と情報を記憶します。
ここで、あなたの子どもが危険な目に遭っていたとします。サメに追いかけられていることにします。
Aさんの子どもはあなたの子どもの顔を見て、思い出します。
「ああ、あの顔は私の父の命の恩人と似ている…!助けなくては…!」
Aさんの子どもはすかさず、棒でサメを追い払い、あなたの子どもは助かりました。
もしここで、あなたの存在が強烈にポジティブな情報としてAさんに記憶されていなかったら
物質的記憶(写真)は捨てられ、遺伝子的記憶(子ども)も失い、あなたの情報はこの世の中から抹消されていたかもしれません。
Aさんだけではなく、その奥さんにも「ポジティブな記憶」としてあなたの存在が記憶されていたら
2人から生まれてくる子どもはよりあなたに対して特異的に反応するでしょう。
いいことをしたら子孫にも返ってくる
良い行いをしたら、良い結果が返ってくる。
悪い行いをしたら、悪い結果が返ってくる。
因果応報、カルマ思想。
あなたの存在が人間だけではなくありとあらゆる生物に記憶され(てい)る可能性があります。
良い行いも、悪い行いも。ありとあらゆるあなたの情報が。
それをその子孫が受け継ぎます。
何らかの形で、あなたの存在が思い出されたとき、どうなるのでしょうか。
先ほどのサメに追いかけられているところを助けられた例と逆のことが起こることも考えられないでしょうか。
「この人は私にとって害がある存在だから排除されてもいい」と認識されることも考えられます。
「神様が見ているから、悪いことはしない」といった宗教的な考えや
「人にやさしくしなさい」という先人たちの教えは
意外と理にかなっているのかもしれませんね。
僕が生き残れていることを先祖に感謝。
僕の子孫が少しでも生きやすいように、いいことを。
九九の七の段が実はあやしい
にしけい