ここ2〜3年、抽象化概念に関する本や記事が多かったと思いますが、今年は転じて「具象寄り」の本や記事を書いています。抽象化には下記のメリットがあります。
1.ひとつ理解できれば複数のことに応用・活用できる (普遍性)
2.暗記や伝達に費やすデータ量が少なくて済む (省力化)
3.具体的ではないので攻撃性を排除できる (平和的)
個人的には具象性の高い現象を抽象化できたときにすごく喜びを感じますし、抽象度の高い書籍や媒体のほうが価値が高いと考えているのですが、世間一般にはそうじゃないことが多いんですね。個人的には「これ何がいいんだろう」と思う本のほうが売れていたりするので、割と常に世間とのズレみたいなものを感じながら生きているのですが、たまーに「抽象化のほうが価値ありますよね」という方と出会えると、ちぎれるぐらいしっぽを振って喜ぶ犬のような顔をしていると思います。
抽象化概念のほうが好きって人って、僕もそうなんですけど「自分のコメントや感想すら具象にすぎない」と思っているのか、あんまり意思表示しないんですね。
抽象化概念には省力化の効果があるので、それを好む人ってあんまり自分から「私も抽象化がいいと思います」って言わないんですよね(おそらくですけど)。なので、こうしてブログや本などで騒いでいる僕はどちらかというと、抽象化業界(?)の中では騒がしいほうなんですね。
記憶と感情
僕は過去のことをあんまり覚えていない、思い出せないんですよね。
幼稚園で何があったとか、小学校でどういう気持ちだったとか。確かに要所要所は覚えていますし、朧げながらなんとなくこうだったなという感覚はあるんですけど、あんまり覚えていないんですね。
あと人の名前とか、本のタイトル名とか著者名とか全然出てこないんですね。なんとなく何て書いてあったかぐらいは覚えているんですけど、具体的な部分がすっぽり抜け落ちてるんです。暗記系のクイズはすごい苦手です。
すごく乱暴でガバガバなタイプ分けをしますけど、出来事や物事を詳細に覚えているタイプの人(記憶力がいい人)って、感情的になりやすい人が多いんじゃないかなと思うんですね。情動記憶(emotional memory)とか自伝的記憶(autobiographical memory)というものがあって、感情的経験をフックに様々な事柄を記憶・思い出すことができるタイプです。
あるあるネタは苦痛の成仏
そういったタイプの人は、過去にあった苦痛を伴う経験や怨みつらみを覚えていて、本当に事細かく「具体的な事象」を記憶しているんですね。
記憶の仕方は人それぞれ違うので、基礎的な情報を構築した上に積み上げながら多様なことを記憶している人もいるんですけど、感情と結びつけてたくさん記憶しているタイプの人たちは、それで生存戦略を勝ち抜いて生き残ってきているので、抽象化を嫌う傾向があるんですね。
抽象化すると、ある意味「それって誰にでも起こりうるよね」という悪魔の相槌を打つことになってしまい、そういった「個人の感情的経験」を否定することになるんですね。「思い出の1ページ」に火をつけて燃やしてしまうような残酷さがあります。
ただ、上述したように抽象化には「攻撃性を排除できる」という利点もあって、抽象化させることで「特定の誰かに対する攻撃性(恨み)」を成仏させることもできるんですよね。よく「あるあるネタ」ってあるんですけど、あれってそういった「苦痛の成仏」みたいな効果があると考えていまして。抽象化の第一歩だと思うんですよね。
具象というスパイスと調味料を
とはいえ、具象は具象でメリットがありまして。最大のメリットは「イメージしやすい」ということだと思います。
「点Pは原点0から10 m/sの速度で進む」よりも「太郎くんはおうちを出発して1時間に600メートル歩きます」のほうがイメージしやすいわけです。何かを新しい概念を理解しようとするときは、具象→抽象のほうが圧倒的に理解がスムーズなんです。今、具象寄りの本やブログを作っているのも「具象→抽象」のルートをより太くしようという狙いがあったりします。
具象は無限にコンテンツを作ることができるので、世の中には具象寄りの本やコンテンツが蔓延しているわけです。それを理解した上で、抽象化させようと考えながらコンテンツを摂取をするか、ただダラダラ1個の具象としてコンテンツを消費するかで時間の使い方が変わってきます。
今のところ具象2割・抽象8割ぐらいの比率で作られたコンテンツが良い塩梅なのかなーと考えていますが、このあたりは今年いろんな本やブログを書く中で見極めていきたいと思います。
抽象化されたコンテンツって「素材の味だけを楽しむ」みたいな無添加物・無味乾燥っぷりがあって、それを摂取して「おいしい!」と感じられる人ってほとんどいないですし、僕のようにそっちのほうが好きと思える人の方が少数派っぽいので、具象という名の調味料やスパイスを足しつつ、やってみようと思います。
にしけい