系統的に異なる複数の生物種が、同じような環境や生態的地位に適応する過程で、独立して類似した形質や機能を獲得する進化現象を収斂進化と言います。ハリネズミとハリモグラが例に挙げられます。彼らは「背後から迫り来る自分よりも大きな外敵から身を守る必要がある」という環境に順応しようとした結果、あのように背中に針をつけるという形を採用したのです。
これは生物進化以外にも言えることで、機能や目的が同じであれば同じような姿形に収斂していく現象は身近なところで見られます。例えば、「水を貯める」という目的があれば、どのような地域・種族も「コップのような形」を作り出します。機能や目的に合わせてデザインが作られていきます。
家や建物も同じです。おとぎ話「3匹の子ぶた」では、「オオカミに襲われない」という目的を達成するために、3匹の子ぶたが家づくりに奮闘します。最初の2匹はそれぞれ藁と木で家を作りオオカミに吹き飛ばされてしまいます。3匹目の子ぶたのみ、レンガで家を作りオオカミの襲来を回避します。
家や建物を眺めていると、「無意識の目的」やそこに住む人たちの「性質」が見えてきます。3匹の子ぶたのようにシンプルではありませんが、「この家は特定の誰かが優位になるような構造になっている」「この建物は特定の人のみが入りやすいようになっている」といった形に気づくことがあります。冒頭にご紹介したように「目的」や「機能」が達成されるために形になっているので、最終的に形になっているものには、その建物を作った人たちの意思のようなものが表れるんですね。
家や建物というのは、環境への順応のひとつの形です。生き物たちが作る巣のように、外部環境に対する「反応」が具現化したものが「棲家」になります。僕が好きな本のひとつに「生きものたちのつくる巣109」という本がありまして、動物たちの素直でシンプルな「順応の形」をパラパラと眺めているだけでも楽しいです。
特にこの本を読んでいると「出入口」の重要性を感じます。出入り口は「選別する機能」があるわけですが、入ってきて欲しいものと入ってきて欲しくないものが、入口に表れるわけです。人間の住まいでいうと「玄関」であり、人体でいうとそのまま「口」になります。
何を受け入れて、何を受け入れたくないか。その人が「どのような範囲」に限定するかで、方向性が決まってくるわけです。気学では移動の向きやタイミングに重きを置かれがちですが、移動が発生しない状態でも「向き」が存在して、何かしら範囲を限定し続けているわけです。特定の向きに向かい続けると、収斂が起きます。
少し向きを変えるだけで、未来に出来上がってくるあなたの姿形も大きく変わってくるかもしれません。
にしけい