椅子取りゲームってすごくよくできた遊び

椅子取りゲームって非常によくできたゲームで、分化と混化、秩序と混沌、レギュラーとイレギュラーといった二項対立を体現・体験できる遊びです。音楽がかかっているあいだ、くるくると椅子のまわりを移動するのですが、この「曖昧な状態」「固定されていない状態」というものが混化した状態と言えます。人々は混化した状態、つまり「わからない状態」に強い恐怖心を覚えます。それは夜をおそれ、朝日を拝み、春をありがたがり、冬に備えるように。「わからない→わかる」という構造に価値を感じるのはニッチ分化を採用することで共存・共栄を図ってきた生物としての記憶が強く刻まれているのでしょう。「失敗」というのは「悪いこと」ではなく「わからなくなる」「結果が明らかにならない」とか「期待する事象が発現しない」という点から「悪い」と考えるのでしょう。「期待する事象」が起こる・確定する。これは完全に分化の方向性です。例えば映画や漫画などでも「混化した状態」からスタートして「分化した状態をゴール」する構造がほとんどです。この混化と分化の振り幅が大きい方が人は感情を揺さぶられるようです。そしてそれに対価を支払う。本を読みたい、何かを調べたいといった「好奇心」というものは「分化」の象徴です。「分ける」から「2」という数字が出てきます。明るみに出るから「火」なのです。私とあなたという「ident」(識別)が起こります。この記事を読んでいるあなたも「にしけい」とは別の世界に生きているとお考えでしょう。よく車に乗ると暴言を吐いたり感情的になったりする人がいますが、あれは空間が「分化」することで、ひとつではなくなることで起きています。分化は楽になる分、短絡的な思考にもつながる可能性も出てきます。分化しすぎると善悪正邪の二項対立で「分ける」ことが起きるので、感情的になりやすい人は分化が進んでいると言えます。誰かや何かに対して強い拒絶を示す時、分化が起きています。「私」と「あいつ」とか「私たち」と「あの人たち」のような分化です。生物の中で「超分化戦略」を採用しているのが昆虫です。昆虫は地球の中では類を見ないぐらい「細分化」されています。わかっているだけでも数百万種類存在します。「昆虫」と分類されているもののなかだけでもそれぐらい分化が進んでいて、多様性の大先輩とも言えます。よく言えばニッチ棲み分けがよくできているとも言えます。特定の環境に特化した進化を遂げているので、トレードオフの判断が早い生物と言えます。人間でも分化が進みすぎると、昆虫のような顔つきになってきます。カマキリのような形というか。よく「狐憑き」という風に紹介されたりする、独特の顔つきがあるのですが、あれは分化が進んだ姿形と言えます。分化は「制限すること」ですから、呪いなんですね。呪いというと「怖い」し「わからない」ものだから「混化」のように考えられがちですが、「どうでもいい」「なんでもいい」という人は呪いをかけることができません。特定の対象物が存在してこそ呪いが存在するからです。

日常生活の中には「分化」が溢れています。こうしてブログを読んでいるのも分化があるからです。そもそも「明日がくる」ということが確定的にならないと安心して寝ることもできません。呪い=約束=分化です。分化は人々が、生物が生きる上では必要なのです。むしろ我々は特定の方向性・特定の時空間に制限、分化された存在と言えます。生まれた瞬間、自分以外の何者とも混ざることができません。なぜなら「分かれること」「違うこと」を目的に生み出されているからです。「誰かと同じ」というのは完全に・完璧にはありえません。しかし、ひとつ「誰かと同じ」に近くとしたらそれは「混化」するときだと思います。混化することで「ひとつ」になれます。性交渉やハグといった行動は「混化」です。いわゆる「愛」というものは混化と言えます。自分と他者を分けずに「ひとつ」と捉えることで、安心につながります。分化しすぎる、自意識過剰・他者評価を気にしすぎる、特定の方向性にこだわりをもちすぎると「ちょっと分化しすぎですよ」と言わんばかりに「混化方向」へと強制的に進ませようとする現象が起きます。それがうつ病だったり、酒やドラッグだったりです。睡眠や昏睡状態、記憶障害なども強制混化へと向かわせる現象かもしれません。「もうどうでもいいよ」という状態になるのが混化です。分化が強すぎる状態、つまり「頑張るぞ!」「トップをとってやる!」「自分は特別なんだ!」という気持ちが強くなりすぎると、強制的に混化に向かいます。

日本はもともと混化寄りの文化をもちながら、国家としては分化寄りです。明治以降の近代化に伴って分化が加速しました。国民性としては「どの宗教でもいいじゃん」という感じだったのですが、国としては侵略・植民地化された時期が他国に比べ少ないため「ニッチ分化」が進んでいるのです。つまり国としては椅子取りゲームでいうところの、「椅子に座った状態」が長かったのです。いわゆる「平和」というやつです。それでも全体として「分化」に向かっています。「多様性」といいながらも、表面的には分化が進んでいるだけなのです。細かく分類して、それを受け入れようとする…といった鋭利なガラスの破片たちを手で包み込み一つにまとめようとしているような状態です。お互いがぶつかり合い、傷つけ合う構図になります。飲み会やオフラインでのコミュニケーションが減少していることも分化を強めている背景にあるでしょうね。面と向かってなら気にしないことも、メールや文章だと強く刺さります。ひとつの空間を共有する、混化するという行動はオンラインではなかなか達成できません。いくらオンライン化が進んでも、分化が進むだけで、人々の心はよりトゲトゲとした形になっていきます。差別・特別・分別・分離・対立…こういったものが起きやすくなるのです。

不思議な話なのですが、分化を好む人ほど「おそれ」が強いと言えます。「どうやって生きていけばわからない」とか「攻撃されたら不安だ」といったおそれが強いひとほど分化しようとします。攻撃的になったり、相手との差別化をマウントという形でとったりもします。あとは「依存」という行為も「特定の対象のみを何度も選択」するという点では分化のひとつの方法です。人は分化と混化を繰り返していますし、分かれては混ざり、混ざっては分かれを繰り返しています。

しかし、やはりどちらか一方に偏りすぎること、全体として「分化傾向」になると危険が伴います。混化しすぎる…というのもある意味分化なのです。また、行き詰まりやすくなるのも「分化」をやり過ぎた結果だったりします。たまには「なんでもいいや」というような気持ちで「イレギュラー」を受け入れてみることで、新たなアイディアや活路が見出せたりします。書籍や情報は整理された分化された媒体である場合が多い。特に「特定の分野の専門書」というものは「分化オブ分化」です。超分化的存在が「専門書」です。この専門書を読んでいて「疑問」が湧いた場合、その答えはその分野の中にはありません。その答えの多くが「それ以外の分野」からもたらされます。知識や情報も大事ではありますが、既に分化されたものなのでそればかりを追っていても「イレギュラー」が起こらないので研究が進みません。椅子取りゲームでずっと同じ椅子に座っているわけです。たまには、席を立ちくるくるまわりカオスを取り入れる必要があるのです。それゆえ僕は「実」を重視します。どうしても放っておくと知識偏重、分化傾向に走りがちなので、意識的に「混化」を生み出す可能性のある「実」を取り入れていかないと、アイディアが陳腐で偏ったものになってしまい行き詰まってしまいます。一見すると「これが何の役に立つのか?」というものにヒントや答えがあったりします。「わからないもの」ほど「わかるようにしてくれる」ヒントがあったりします。理解できないもの、よくわからないものに手を出すのは怖いです。混化方向に進むわけですから、生物の個としての生存本能としても逆行しています。しかし何度もいいますが「よくわからないもの」にこそ、ヒントがあります。

無理に分ける必要もありません。割り切る必要もありません。決める必要もありません。椅子撮りゲームで言えば、椅子のまわりを回り続けることになりますから、確かに疲れるかもしれません。しかし「どの椅子に座ろうか」とグルグルまわり続けることで、自然と「この椅子にしようかな」というものが出てきます。なので無理に決めなくてもいいと思います。

あとは「混化」に飛び込める人ほど、すごい発見をすることが多くて。勇気を出して「わけわかんないこと」に向き合うことで、得るものが大きいようです。

このにしけいポンというブログはいろいろな記事や思想が雑多に混ざっているので「混化」を体現しているとも言えます。特に方向性を持たせていない「雑記ブログ」でありながら「会社のホームページ」でもあり「ECサイト」でもあります。すごいいろいろ混ざってます。一時期分けようと思っていた時期もあるのですが、もう分けることがどうでもよくなっているんですね。そう思いたいがためにこの記事を書いている…なんてことはありませんが、この混化ブログにお付き合いいただいているあなたはおそらくほどほどに分化が進み、心が落ち着いている人なのでしょうね。

いつもありがとうございます。

にしけい

 

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書いている

西田 圭一郎 (にしけい)

1987年富山市生まれ。化学系工学修士。商社の開発営業職を辞めて、占いとWeb開発などを生業にしています。趣味は読書と旅とポケモン。文章を書くことが好きです。三児の父。詳しくはこちらから。

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