「私とは何か―「個人」から「分人」へ」を読んで

 

ある図書館で働く女性からご紹介頂いて読みました。

私とは何か―「個人」から「分人」へ(平野啓一郎/講談社)

kojinnkarabunnjinnhe

 

人格はどこまでも分割できる=分人

 

「自分探し」とか「本当の自分」とか「裏の顔、表の顔」とか

「自分=1人」で、それ以外の顔は仮初(かりそめ)の顔だというこれまでのペルソナ論的なものを根本から覆す「分人」という定義。

この本では、会社で働いている自分(分人)も、好きな人と一緒にいるときの自分(分人)も、本を読んでいるときの自分(分人)も、実は「どれも本当の自分ですよ」と言っているわけです。

そもそも「個人」という定義は、キリスト教のような一神教で一元論的な思想を政治的に取り入れていた西洋から伝わったもので、日本に最初に伝わったとき日本人たちは「何それ?」って感じだったらしい。

ギリシア神話もそうだけど、八百万の神と仏教をまぜこぜにして信仰していた日本人にとっては確かに「ひとつのことだけに傾倒する」ということはよく分からなかったんでしょうね。

神社の敷地内にお寺建てたりしてるぐらいだから。イオンの中にセブンイレブンが入っているようなもんだもんなぁ。

 

「個性」は分人の構成比率

 

著者の平野啓一郎氏はこの「分人」をテーマにした本をいくつか書いてるみたいなので、これからチェックしますが

「分人」あるあるの一番、良い例えが

「高校時代の友人と大学時代の友人が同席したときの気まずさ、居心地の悪さは何なんだろう?」という話。

高校時代と大学時代でそれぞれ、なんというかテンションやキャラが違って、その違和感を突き詰めていくと「分人」のモデルを使えば説明できるよねって話なんです。この話はスゴイ同意した。

高校の友だちも大学の友だちも別に嫌いじゃないし、一緒にいて凄い楽しかったし、今も仲良くさせてもらってるんだけど、なんかそれぞれの友だちといるときの顔って違うんですよね。

 

1人の人間の中には複数の分人が同居していて、その数と比率が「個性」を決める。

どれも本当の自分なんだけど、相手や対象によって分人が変化する。

つまり、「自分」というものは本来存在しなくて、誰かと何かと接触して初めて「自分(分人の1人)」が形成されると著者は言っています。

これは、中国式占いの陰陽説の互根(ごこん)の作用と似ている気がする。相手がいて初めて自分が生じる。これは面白いなぁ。

1人のニンゲンに含まれる分人同士は並列の関係みたいですが、比率が違うんなら、社長不在の会社の組織図みたいなイメージなのかなぁと思ったり。

 

二面性が強い

 
この本を読んでふと自分の手相を思い返してみた。
 
手相を見ている中で「二面性が強い」「裏表のギャップが大きい」と読み取れる人がたまにいる。
 
知能線や感情線が大きく分断されているとこの傾向が強い。
 
これを「分人」のモデルを使って説明するとしたら
 
Aというキャラクターの分人と、Bというキャラクターの分人のベクトルの差が大きいわけだから
 
「裏表が激しい」=「相手や状況によってとことん合わせることが出来る」と換言できる。
 
感受性が豊かな上に、その世界に染まり、そこからいろんなものを吸収し取り込もうとする力が強い。
 
そして、このような人の強みは、掘り下げた人格情報を組み合わせることで新しいものを創り出すことが出来ること。
 
分人が多い方がより柔軟で面白い発想が出来る反面、一つの分人をより深く発展させることで見えてくるものもあるから
 
どっちがいいということは言えないけど、この分人モデルから、また新たな手相の価値が見えてきた。
 
 
 

ミクロコスモスとマクロコスモス

 
人間の人格が分割可能なものであれば、肉体を構成する細胞もまたある意味無限に細かく分割できる。
 
細胞よりも小さな構成単位が無限に存在するし、細胞が集合し統合することで、さらに複数の肉体が集合することでより大きな力が生まれる。
 
もともとはすべてバラバラな生き物の寄せ集めだから、多数決の原理とか一神教なんてナンセンスだ、と思う反面
 
自分の肉体が小さな構成単位の寄せ集めで、こうしてブログを書いたり行動したりしている以上
 
「寄せ集めのチカラ」を否定することは出来ないし、むしろ無限の可能性があるとさえ思う。
 
しかし、あまりにも「寄せ集めのチカラ」(組織・家族など)に固執すると思考が縛られて疲れてしまう。
 
そんな、人間関係に疲れている人、うまくいっていない人がこの本を読むと何かヒントが得られるかもしれない。

 

にしけい

 

私とは何か―「個人」から「分人」へ(平野啓一郎/講談社)

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